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 昭和51年版 犯罪白書 第1編/第3章/第2節/2 

2 最近の動向

 まず,詐欺について,最近5年間の手口別発生件数の推移を示すと,I-72表のとおりである。全体として,その形態に特に著しい変化は認められないが,昭和50年の発生件数について見ると,前年に比べて,月賦購入を装って商品をだまし取る月賦詐欺,仕入れを装って生産者,卸商等から多量の商品をだまし取る取込み詐欺,小売商品をだまし取る商品詐欺などのほか,無銭飲食・無銭宿泊が増加している。また,不動産の売買等を口実として金品をだまし取る,いわゆる家屋師,地面師などの事件も多くなってきている。

I-72表 詐欺の手口別発生件数(昭和46年〜50年)

 次に,横領については,昭和25年以降の一般的減少傾向の中にあって,46年からは起伏を示しながらも若干の増加現象が見られる。しかし,その増加は,主として所有者不明の自転車等の領得にも適用される占有離脱物横領の増加によるものである。最近5年間における横領,業務上横領,占有離脱物横領の推移をI-73表によって見ると,横領,業務上横領がいずれも46年に比べて減少しているのに対して,占有離脱物横領は著しい増加を示していることがわかる。I-74表は,戦後における横領発生件数について,その内訳と構成比を示したものである。構成比について見ると,横領は,30年以降減少を続けているのに対して,占有離脱物横領は,40年以降次第に増加を続け,50年には横領発生件数の過半数を占めるに至っている。

I-73表 横領の態様別発生件数(昭和46年〜50年)

I-74表 横領の態様別発生件数の推移(昭和21年,25年,30年,35年,40年,45年,50年)

 なお,背任については.実数が少ないので,最近の一般的動向を指摘することはできない。