3 国外事犯 昭和45年3月に日本赤軍による日航機「よど号」ハイジャック事件が発生したのを初めとして,その後も内外の過激派によるハイジャックや在外公館等の襲撃事件が引き続き発生している。 昭和50年には,日本赤軍と称する5人が,けん銃等で武装して,在マレイシア・アメリカ大使館等に侵入,占拠し,アメリカ合衆国領事,スウェーデン王国臨時代理大使等53名を人質としたうえ,我が国において裁判等のため身柄を拘束中の赤軍関係者ら7名の釈放等を要求するという事件が発生した。政府は,人命尊重を第一義として犯人側の要求を受け入れ,犯人らが釈放等を要求した者のうち5人を出国させてマレイシアに護送し,人質と交換に犯人側に身柄を引き渡した。犯人及び釈放された5人は,その後リビア・アラブ共和国に入り,同国官憲に引き渡された。この事件は,海外で活動している日本赤軍が要求の対象を我が国内に指向してきた最初の事例である。 この種の国外事犯は,その性質上予測が極めて困難であり,また,今後,同種事犯が発生するおそれがないとは言い切れないので,事犯防止のためには,国内的動向に対する警戒を強化するほか,事犯防止に関する国際世論を喚起し,国際的な情報交換及び相互協力の体制を確立する必要がある。 このほか,昭和50年に検挙された日本赤軍構成員による国外事犯としては,[1]いわゆる在オランダ・フランス大使館襲撃事件,[2]スウェーデン王国において日本国大使館の旅券返納命令に従わずこれを返納しなかった事件,[3]デンマーク王国等へ不法入国するためレバノン共和国において日本国旅券を偽造するなどした事件,[4]カナダからアメリカ合衆国に不法入国するためアメリカ合衆国において偽造の有権者登録カード等を行使した事件などが挙げられる。これらの事犯から,最近,海外における過激派の行動半径が次第に拡大していく傾向をうかがうことができる。
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