前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和51年版 犯罪白書 第1編/第1章/第6節/2 

2 収賄

 収賄は,公務員犯罪の中で重要なものの一つである。この種犯罪は,公務員の職務の公正を阻害し,政治・行政に対する国民の不信を招くにとどまらず,ひいては,国民一般の遵法意識を低下させるなど,測り知れない弊害をもたらすものである。前出のI-45表に見るとおり,収賄の検察庁新規受理人員は,近年おおむね増加する傾向にあり,昭和49年に減少したが,50年では再び増加して771人となっている。贈収賄の罪は,その性質上暗数が大きいと考えられ,受理人員が犯罪の実態を表すとは言えないが,このような収賄受理人員の推移は,この種犯罪が一部では依然として減少していないことをうかがわせるものである。
 I-47表は,警察庁の統計により,昭和35年から39年までの5年間とその10年後の45年から49年までの5年間に,それぞれ,賄賂罪で検挙された人員の多かった公務員(いわゆる「みなす公務員」を含む。)の職種につき,上位の10位までを掲げて,その比較をしてみたものである。最近5年間の検挙人員累計を公務員の種類別に見ると,土木・建築関係の地方公務員と地方公共団体の各種議員の検挙人員が多く,これらが全体の63.4%を占めている。35年から39年までの上位10位の検挙人員累計1,885人中地方公務員関係は1,165人(61.8%)であった。45年から49年までの上位10位の検挙人員累計1,243人中地方公務員関係は975人(78.4%)となっており,35年から39年までの5年間と比較すると,地方公務員の検挙人員の占める割合が増加している。

I-47表 贈収賄事件公務員所属別検挙人員(昭和35年〜39年,45年〜49年)

 次に,収賄事件の通常第一審における科刑状況を昭和40年及び最近5年間について見ると,I-48表のとおりである。刑期別に見ると,1年以上の刑に処せられた者の占める割合は,49年では,前年より若干減少して32.4%となっている。また,執行猶予率は,前年をやや下回ったが,なお94.6%と高率を示している。

I-48表 収賄罪通常第一審科刑別人員(昭和40年,45年〜49年)

 この種犯罪の発生を防止するためには,公務員各自の自覚と綱紀の粛正に待つところが大きいが,同時に,事犯の厳正な取締りと犯人に対する適正な刑罰権の行使もまた必要である。