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 昭和51年版 犯罪白書 第1編/第1章/第6節/1 

第6節 公務員犯罪

1 公務員犯罪の受理と処理

 公務員による犯罪には,例えば収賄のように,公務員の職務に関して行われるものと,その職務に関係なく行われるものとがあるが,ここでは,その両者を含めて,公務員によって行われたすべての犯罪について述べる。I-45表は,昭和46年以降,検察庁で新たに受理された公務員(公団や公社の職員のようないわゆる「みなす公務員」を除く。)による犯罪を主要罪名別に見たものである。公務員犯罪全体の受理人員は,48年まで増加を続けてきたが,49年に減少し,50年には前年より373人増加して1万9,262人となっている。受理人員が最も多いのは業務上(重)過失致死傷で,同罪の受理人員が公務員犯罪全体の受理人員中に占める割合は,50年では72.0%である。前年と比較して受理人員が減少しているのは,刑法犯のうちの業務上(重)過失致死傷,偽造と特別法犯であり,他はすべて増加している。増加の目立つのは,収賄(217人,39.2%増),職権濫用(193人,20.3%増)などである。

I-45表 公務員犯罪主要罪名別検察庁新規受理人員(昭和46年〜50年)

 次に,最近3年間の検察庁における公務員犯罪の処理状況を示したのが,I-46表である。昭和50年について,罪名別に起訴人員を見ると,業務上(重)過失致死傷の8,176人が最も多く,収賄の457人がこれに次いでいる。起訴率では,業務上(重)過失致死傷が60.9%と最も高く,以下,収賄の59.1%,横領の30.1%の順となっている。しかし,起訴区分別に見ると,業務上(重)過失致死傷では,その99.0%が略式命令の請求であるから,実質的に最も厳しい処理がなされているのは収賄であると言ってよいであろう。職権濫用の起訴率が例年極めて低いのは,この種事件の大部分が警察,検察庁,裁判所,矯正施設などの職員に対する告訴・告発事件であり,事実自体が犯罪とならないもの,犯罪の嫌疑がないか,あるいは不十分なもの,告訴・告発時に既に公訴時効が完成しているものなどが多いためである。

I-46表 公務員犯罪主要罪名別起訴・不起訴人員と起訴率(昭和48年〜50年)