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 昭和51年版 犯罪白書 第1編/第1章/第5節/1 

第5節 精神障害者の犯罪

1 精神障害者による犯罪

 昭和49年及び50年における成人の刑法犯検挙人員のうち,精神障害者又はその疑いがあると認められた者は,I-34表のとおりで,50年では0.9%となっている。これらの者について罪名別に見ると,窃盗が最も多く,以下,傷害,殺人,詐欺,放火,暴行の順となっている。また,これらの者が検挙人員中に占める割合を見ると,放火,殺人における比率が目立っている。

I-34表 成人刑法犯検挙人員中精神障害者の比率(昭和49年・50年)

 法務省刑事局の資料によると,昭和46年から50年までの5年間に,全国の地方(区)検察庁で処理された事件のうち心神喪失の理由で不起訴となった被疑者と,第一審裁判所で判決のあった事件のうち心神喪失を理由とする無罪又は心神耗弱を理由とする刑の減軽の言渡しを受けた被告人との合計は,2,404人である。I-35表は,この2,404人について,罪名別・病名別の内訳を示したものである。罪名別では,総数中殺人の34.3%が特に高く,以下,放火の17.4%,暴行・傷害の14.2%の順になっており,病名別では,精神分裂病が54.2%で最も多い。

I-35表 心神喪失・心神耗弱者の罪名別精神診断結果(昭和46年〜50年の累計)

 次に,少年の一般保護事件(少年保護事件のうち道路交通保護事件を除いたもの)について見ることとする。家庭裁判所の終局処分の決定があった少年のうち,精神判定(少年鑑別所の資質鑑別その他家庭裁判所の調査段階における少年の精神状態に関する判定をいう。)を受けた少年の割合は,昭和45年の約10%から49年の約7%にまで減少している。I-36表は,精神判定を受けた少年について,その判定の結果を示したものである。精神障害者と判定された者の割合は,45年の9.3%から49年の5.9%にまで年々減少している。更に,49年1年間の判定人員1万630人について非行名別人員を見たのが,I-37表である。そのうち,精神障害者626人について見ると,窃盗が357人(57.0%)と最も多いこと,また,非行名別に精神障害者の割合を見ると,放火が41人中16人(39.0%)とかなり高率であることは,成人の場合と同じである。

I-36表 一般保護事件終局人員の精神状況(昭和45年〜49年)

I-37表 一般保護事件終局人員中の非行名別精神障害者の比率(昭和49年)