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2 精神障害者による犯罪の特色 前述の2,404人(昭和46年から50年までの5年間に検察の段階で心神喪失と認められ,又は裁判の段階で心神喪失若しくは心神耗弱と認められた者の合計人員)のうちの再犯者1,019人について,本件罪名と直近の前科・前歴罪名との関係を見たのが,I-38表である。2回連続して窃盗を犯した者が最も多いことは,一般の累犯傾向においても見られるところであるが,殺人,放火等の重大な犯罪や,暴行・傷害,強姦・強制わいせつ等の危険な犯罪を繰り返す者もかなりの数に上っている。
I-38表 精神障害者の本件と直近の前科・前歴罪名との関係(昭和46年〜50年の累計) また,暴行・傷害の前科・前歴を持つ者で本件において殺人を犯している者が目立ち,両者の間に親近性が認められるほか,窃盗の前科・前歴を持つ者で,本件において殺人を犯している者も少なくないことなど,一般の累犯傾向とはかなり異なっている。これは,やはり,精神障害者による犯罪の特殊性の一端を示すものと言えよう。次に,故意の犯罪行為によって被害者が死亡し,又は傷害を負った事件(殺人,傷害などの故意犯のほか,強姦致死傷,傷害致死などの結果的加重犯を含む。)を対象とした,法務総合研究所による「生命・身体犯の被害者等に関する実態調査」から,精神障害者による犯罪を見てみよう。昭和49年中に全国の検察庁において心神喪失を理由として不起訴の裁定があった者150人について,被害者の落ち度の有無と程度及び被害者と加害者との関係を見たのが,I-39表及びI-40表である。被害者に落ち度のない者の比率が極めて高いこと,また,面識のある者,特に親,子,配偶者が被害者となりやすいことが示されている。精神障害者による生命・身体犯の特殊性が,その被害者からもうかがわれる。 I-39表 心神喪失者による生命・身体犯における被害者の落ち度 I-40表 心神喪失者による生命・身体犯における被害者との関係 |