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 昭和51年版 犯罪白書 第1編/第1章/第3節/2 

2 昭和50年の女性犯罪

 昭和50年の女性犯罪を内容的に更に詳細に検討するために,刑法犯について主要罪名別に男女別検挙人員及び前年との増減を示したのが,I-29表である。50年の女性犯罪の圧倒的多数を占めるものは窃盗である。その検挙人員は,5万1,711人に達し,女性検挙人員総数の84.2%を占めている。窃盗以外の女性犯罪で検挙人員が比較的多いものは,詐欺の1,278人,傷害・同致死の1,005人,暴行の678人,恐喝の648人などである。

I-29表 刑法犯主要罪名別・男女別検挙人員(昭和49年・50年)

 ところで,特に,女性比の高い犯罪,その意味で女性犯罪の典型とも言い得るものとしては,まず,嬰児殺を挙げなければならない。嬰児殺の検挙人員は,総数で156人であるが,うち女性が139人を占め,女性比は89.1%に達している。そのほか,女性比の高いものは,窃盗(26.1%),自殺関与(19.2%),放火(15.6%),殺人(13.0%)などである。
 主要罪名別に前年との増減数を見ると,窃盗の検挙人員の増加が目立って多く,2,589人の増となっており,女性検挙人員の増加数3,171人の8割強を占めている。
 次に,刑法犯女性検挙人員を罪名別・年齢層別に見ると,I-7図のとおりである。20歳未満の少年と比較的若い20歳代の成人の占める割合の高い犯罪としては,強姦(共犯),恐喝,強盗等がある。そのうち,実数の多い恐喝について見ると,検挙人員648人中の79.8%までが少年である。他方,30歳以上の者の占める比率の高い犯罪としては,詐欺,横領,殺人等がある。そのうち,実数の多い詐欺について見ると,検挙人員1,278人中の68.6%までが30歳以上の者である。

I-7図 刑法犯女性検挙人員の罪名別・年齢層別構成比(昭和50年)

 検挙人員の大半を占める窃盗は,少年の間にも決して少なくはなく,少年の占める比率は,33.5%に達しているが,30歳以上の年齢層も44.9%とかなり高い割合を占めている。傷害・同致死も,窃盗と類似した傾向を示しており,少年が32.8%,30歳以上が.44.9%となっている。
 以上のことから,我が国の女性犯罪の増加は,主として,窃盗の増加によるものであり,恐喝や強姦の増加は,主として,少年によってもたらされており,また,詐欺の増加は,主として,比較的高い年齢層によってもたらされているものと推測される。
 一方,最近5年間における道交違反を除く女性特別法犯の送致人員の推移を示すと,I-30表のとおりである。昭和50年の送致人員総数は,前年より7,118人増加して,2万8,654人となっている。50年の送致人員を46年と比べると,特に覚せい剤取締法違反が3倍以上に増加していることが注目される。

I-30表 特別法犯女性送致人員(昭和46年〜50年)