前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/3 

3 暴力団関係者による犯罪

 検挙人員全体の中に占める暴力団関係者の割合によって,いかなる犯罪が暴力団関係者によって犯されているかを見ることとする。
 最近5年間における業過を除く刑法犯の検挙人員のうち暴力団関係者の占める割合を主要罪名別に示したのが,III-108表である。最近5年間の推移を見ると,検挙人員全体では,昭和45年から47年まで減少した後,48年及び49年と増加しているのに対して,検挙された暴力団関係者は,46年に一時減少した後,47年以降増加傾向を示しているため,検挙人員中に占める暴力団関係者の割合は,45年の9.6%から49年の10.9%まで上昇している。

III-108表 主要罪名別刑法犯暴力団関係検挙人員の全検挙人員に占める比率(昭和45年〜49年)

 昭和49年の検挙人員について罪名別に見ると,暴力団関係者の占める割合は,脅迫が47.5%で最も高く,続いて,賭博の47.2%,恐喝の40.5%,殺人の25.7%,傷害の25.1%,暴行の22.2%などとなっている。これを前年と比較すると,放火,詐欺及び賭博を除くその他のすべての罪名において,暴力団関係者の占める割合が上昇している。
 次に,最近5年間における道交違反を除く特別法犯の送致人員(検挙した被疑者を検察庁又は家庭裁判所に送致(送付)した人員をいう。)のうち暴力団関係者の占める割合を主要罪名別に示したのが,III-109表である。最近5年間の推移を見ると,送致人員全体では起伏のある動きを示しているが,暴力団関係者は,昭和49年に前年より減少しているものの,48年まで逐年増加を続けてきたため,送致人員中に占める暴力団関係者の割合は,45年の5.3%から49年の11.7%まで上昇している。49年の送致人員について罪名別に見ると,暴力団関係者の占める割合は,覚せい剤取締法違反が62.8%で最も高く,次いで,自転車競技法違反の55.8%,競馬法違反の39.0%,職業安定法違反の32.0%,銃砲刀剣類所持等取締法違反の20.6%などの順となっている。これを前年と比較すると,すべての罪名にわたって,暴力団関係者の占める割合が上昇している。

III-109表 特別法犯送致人員と暴力団関係者の比率(昭和45年〜49年)

 これら暴力団関係者の占める比率の高い犯罪は,暴力団の資金源や武装化に関連の深いものであり,暴力組織を効果的に規制するためには,この種の犯罪に対する厳重な取締りが必要である。