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 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第1章/第6節/2 

2 処遇の概要

 少年刑務所では少年のみならず,区画された場所に26歳未満の成人をも収容し,両者に共通の処遇を行っている。したがって,ここでは両者の処遇をまとめて説明する。
 これら青少年受刑者に対する処遇の重点は,青少年が教育の可能性の大きいことを考慮して,職業訓練・教科教育及び生活指導に置かれている。特に,昭和48年4月から在監者の作業時間が短縮されたことに伴い,いっそう教化的処遇が強化されている。

(1) 職業訓練及び刑務作業

 昭和50年4月1日現在,少年刑務所において職業訓練を受けている訓練生の種目と人員は,III-90表のとおりで,人員数の多い種目は,理容,電工,溶接,左官,建築大工等である。所内で職業訓練を修了した者は,職業訓練法,理容師法その他の法令に基づいた公の技能検定を初め,各種の試験を受けて,公認された職業上の資格・免許を取得することができる。49年中に各種の資格・免許を得た総人員は1,069人で,収容数の減少にもかかわらず,取得人員は前年を160人も上回っている。種目別の人員は,III-91表に示すとおりである。

III-90表 少年刑務所における職業訓練種目と人員(昭和50年4月1日現在)

III-91表 少年刑務所における職業訓練による各種資格及び免許取得人員(昭和49年度)

 職業訓練を受けない者は,一般の刑務作業を行っているが,この場合も,できる限り需要の多い有用作業が選定され,かつ,受刑者職業訓練規則の趣旨に基づいた指導が行われている。昭和50年3月末現在,少年刑務所において刑務作業に就業している受刑者は,法務総合研究所の調査によると,1,784人で,就業人員の多い種目は,金属,紙細工,印刷,経理夫,木工等である。

(2) 教科教育

 少年受刑者に対しては,毎日4時間以内の教科教育を行わなければならず,必要ある場合には,この時間を超えても差し支えないとされている。
 昭和49年における少年新受刑者のうち,義務教育未修了者は8人(総数の3.9%)であるが,義務教育未修了者に限らず,その他学力の低い者に対しては,教科教育が重点的に実施されている。義務教育未修了者が所定の教科教育の課程を修了した場合,少年院におけるように,その者に修了証明書を発行できる制度はないが,松本少年刑務所では,30年4月以降刑務所内に松本市立中学校の分校を設け,全国の少年刑務所から適格者を募集して入学させている。所定の課程の修了者には,本校の校長から修了証明書が交付される。また,奈良少年刑務所においても,高等学校通信教育課程が50年4月に設置された。
 なお,昭和25年以降公費又は私費による通信教育が活用されているが,49年度中には,136人が通信教育を修了している。資格取得の主なものは,ペン習字,簿記,英語,高等学校,司厨士等である。

(3) 生活指導

 少年受刑者の処遇は,成人受刑者の処遇に比べて,より教育的であることを特色とし,上述の職業訓練,教科教育のほか,生活指導が重視されている。この生活指導は,具体的には,入所時におけるオリエンテーションのための教育,規律的な生活訓練,各種委員会,カウンセリング,篤志面接委員による面接指導,各種の体育・文化・スポーツ等の行事,余暇時間における各種のクラブ活動などを通じて,計画的に実施されている。特に,最近では,集団討議や集団行動訓練など集団場面を通じて,規律・自主・協調などを目指した指導が活発に行われている。