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以上の各章においては,刑事司法手続の流れに従い,検察・裁判・矯正・保護の現況を概観してきたが,本章では,最近の成人処遇対象者(受刑者及び保護観察対象者)の特徴点を考察することとする。このような処遇対象者は,刑事裁判によって決定されるので,まず,最近の科刑傾向について概観する。
受刑者及び保護観察対象者の大部分を占める懲役・禁錮の確定裁判を受けた人員は,昭和35年の8万9,144人から39年の7万3,674人まで減少し,40年(7万8,576人),41年(7万9,542人)にいったん増加した後,45年には6万5,809人にまで減少した。次いで,46年(6万9,142人),47年(7万4,712人)の両年において増加を示した後,再び減少に転じ,49年では6万6,559人(35年を100とする指数で見ると75)となっている。確定裁判を受けた人員総数に占める懲役・禁錮の割合は,49年では3.1%にすぎない。 次に,懲役・禁錮について,執行猶予率(裁判確定人員中に占める執行猶予確定人員の比率)の推移を見ると,両者の合計の執行猶予率は,おおむね上昇傾向をたどり,昭和49年では59.6%に達している(II-12図)。また,執行猶予確定人員中に占める保護観察に付された人員の比率(統計の関係で罰金刑をも含むが,罰金刑の執行猶予人員は少数なので,おおむね懲役・禁錮についての比率に近い。)の推移を見ると,32年の15.0%から38年の20.6%まで上昇したが,以後起伏はありながらも下降傾向を示しており,49年では17.4%となっている。このような最近の科刑傾向は,当然のことながら,受刑者,仮出獄者及び保護観察付執行猶予者の量と質の両面を規定するものである。 II-12図 執行猶予率の推移(昭和32年〜49年) 次に,罪種・罪名から見ると,通常第一審で懲役・禁錮の実刑を言い渡された者では,刑法犯の比率の低下と特別法犯の比率の増大が見られ,刑法犯の中では,窃盗の比率が低下し,業務上(重)過失致死傷の比率が増大している(II-109表及びII-13図)。このような傾向は,最近の成人処遇対象者の特徴と密接に関連している。II-109表 刑法犯・特別法犯別懲役・禁錮の実刑言渡人員(昭和28年,38年,48年) II-13図 刑法犯通常第一審主要罪名別懲役・禁錮の実刑言渡人員(昭和28年,38年,48年) |