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 昭和50年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/1 

第2章 統計から見た昭和49年の犯罪の概観

第1節 刑法犯の概況

1 概説

 まず,昭和49年の刑法犯の概況を犯罪統計によって考察する。
 I-13表は,昭和49年の刑法犯の発生件数と検挙状況を主要罪名別に示したものである。49年の刑法犯は,前年と比べて,発生件数では5万6,779件減少して167万1,947件となり,検挙人員では7万8,969人減少して85万2,347人となっている。これらの減少の主な理由は,業務上(重)過失致死傷の大幅な減少によるものである。罪名別に見ると,発生件数及び検挙人員とも,大部分の罪名において前年より減少している中にあって,窃盗,強盗致死傷・強盗強姦,放火が増加したことが注目される。

I-13表 主要罪名別刑法犯の発生・検挙件数と検挙人員(昭和48年・49年)

 昭和49年の刑法犯発生件数の罪名別構成比を見ると,窃盗が総数の60.6%で最も多く,次いで,業務上(重)過失致死傷の27.7%,詐欺の3.0%,傷害・同致死の2.3%,暴行の1.4%の順となっている。殺人,強盗,強姦・同致死傷,放火などの凶悪な犯罪の構成比は,0.2%ないし0.1%と極めて低率である。
 一方,検挙人員の罪名別構成比を見ると,業務上(重)過失致死傷が総数の57.7%を占めて最も多く,続いて,窃盗の22.4%,傷害・同致死の5.5%,暴行の3.7%などとなっている。発生件数と検挙人員の構成比では,窃盗と業務上(重)過失致死傷の順位が変わるのは,後に述べるとおり,両者の検挙率の間に相当の開きがあるためである。
 昭和49年の刑法犯の検挙率を罪名別に見ると,業務上(重)過失致死傷のほぼ100%を最高とし,横領,殺人,詐欺,暴行,傷害・同致死,強姦・同致死傷では,90%以上の高率となっているが,刑法犯の発生件数の約6割を占める窃盗の検挙率は51.1%と低率である。
 参考までに,昭和39年及び49年の刑法犯発生件数及び検挙人員を主要罪名別に図示したのが,I-19図である。49年の罪名別構成比は,39年と比較して,発生件数及び検挙人員とも,業務上(重)過失致死傷では高くなり,窃盗,詐欺,横領,恐喝,傷害・同致死,暴行では低くなっている。

I-19図 主要罪名別刑法犯発生件数・検挙人員の百分比(昭和39年・49年)

 次に,刑法犯で検挙された者の属性について検討することとする。
 まず,昭和49年の業過を除く刑法犯検挙人員の性別を見ると,男性は総数の約84%を占めているのに対して,女性は約16%である。後に女性犯罪の節で詳しく説明するとおり,最近の女性検挙人員の構成比は上昇傾向にある。
 また,昭和44年及び49年の業過を除く刑法犯検挙人員の年齢層別構成比を示したのが,I-14表である。49年の検挙人員の62.4%は,30歳未満の者で占められており,若年者の犯罪対策の重要性を示している。また,49年の構成比は,44年と比較して,20歳代では低下しているのに対して,20歳未満及び30歳以上ではいずれも上昇していることが注目される。

I-14表 業過を除く刑法犯検挙人員の年齢層別構成比(昭和44年・49年)

 昭和49年における成人の業過を除く刑法犯検挙人員について,前科を有する者の割合を主要罪名別に示したのが,I-20図である。前科を有する者の割合は,総数では29.3%であるが,罪名別では,恐喝の59.8%,強盗の45.8%,強盗致死傷・強盗強姦の41.8%,傷害・同致死の40.4%,殺人の39.9%と高い比率を示しており,犯罪を犯したことのある者の再犯防止対策が重要であることを示している。

I-20図 業過を除く刑法犯成人検挙人員の前科を有する者の比率(昭和49年)

 以下,項を改めて,財産犯罪,暴力犯罪,性犯罪,過失犯罪及びその他の刑法犯の別に,最近の状況を概説する。