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 昭和50年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/6 

6 公害犯罪

 近年,我が国は飛躍的な経済成長を続けてきたが,急激な経済成長と産業の高度化,更には人口の都市集中化などが原因となって,大気汚染,水質汚濁等の各種公害が発生して国民生活を脅かすに至り,公害問題の解決は国政上の最も重要な課題の一つとなった。特に,昭和45年末に開かれた「公害国会」(第64回臨時国会)以来,公害関係諸法令の大幅かつ抜本的な改革が図られるとともに,取締りの強化などを含めて計画的・総合的な公害対策が推進されてきている。刑事罰則の面から見ると,事業活動に伴う有害物質の排出により,公衆の生命又は身体に危険を生じさせた行為そのものについて,行為者及び法人等の事業主体を処罰することなどを定めた「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」の制定や,いわゆる直罰規定(一定基準を超える有害物質の排出自体に対する処罰規定)を定めた水質汚濁防止法や大気汚染防止法等各種行政規制法の制定・改正がなされるなど,公害を生じさせるような一定の行為に対する犯罪化が行われた。公害犯罪は,このような立法によって犯罪とされた新しい形態のものを含んでいる。
 昭和44年以降について,公害犯罪の動向を見ると,I-9図のとおりである。公害犯罪の送致件数は,逐年大幅な増加を示している。すなわち,この種事犯の送致件数は,49年には44年の11倍を超える4,716件となっており,新たに制定・改正された公害関係諸法令がほぼ全面的に施行されるに至った後の47年を100とする指数で見ても,48年180,49年240とその増加の比率は極めて高い。このような増加は,国民のこの種事犯に対する厳しい非難を背景とした取締りの強化によるところも大きいと思われる。

I-9図 公害犯罪送致件数の推移(昭和44年〜49年)