2 コンピュータ機構の盲点を利用した犯罪 近年における目覚ましい科学技術の発達を象徴するものの一つとして,コンピュータの普及がある。我が国のコンピュータ実動台数は,昭和45年3月末現在の約6,700台から49年3月末現在の約2万3,400台へと増加している。最近,銀行等の金融機関の業務においても,コンピュータのオンライン化や現金自動支払機の普及などによって預金受払事務が簡易化,合理化され,全国いずれの支店においても預金の払戻しが可能となり,あるいは,現金自動支払機の営業時間内であれば,キャッシュカードを用いて簡単に預金の払戻しができることとなった。このように預金の払戻しが極めて便利になった反面,コンピュータ機構の盲点を利用した金融機関職員の犯罪や,犯罪による金員の受領の手段として,仮名で開設した預金口座に送金を受けたうえキャッシュカードを用いて現金自動支払機から現金を引き出す方法をとる事犯など,犯人検挙の困難な事件が発生している。昭和49年中に発生したこの種の事犯としては,例えば,[1]信用金庫職員が,職務上入手した同金庫のテスト用キャッシュカードにより作成した正規のものと同様のキャッシュカードを使用して,同金庫支店に設置された現金自動支払機から現金約200万円を窃取した事件(京都地検),[2]乳児を拐取して身の代金を要求し,仮名で開設した銀行預金口座に150万円を払い込ませたうえ,国鉄駅構内に設置された銀行の現金自動支払機から現金29万円を引き出した事件(東京地検)などがある。
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