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 昭和50年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/3 

3 販売業務の省力化に伴う犯罪

 技術革新による産業の発展は,労働力の不足と人件費の上昇をもたらした。このような情勢の下で,企業は経営の合理化,省力化を図っているが,販売業務の省力化の面では,自動販売機の急速な普及や,スーパーマーケットなどセルフサービス販売方式の店舗の増加となって現れ,このような事態は,窃盗の態様にも影響を及ぼしている。I-7表は,最近における自動販売機荒らし及び万引きの発生件数の推移を見たものである。まず,自動販売機荒らしについて見てみよう。自動販売機の普及台数は,昭和46年末の約139万台から逐年増加して49年末では約250万台となっている。この機械は,もともと省力化を目的とし,深夜・休日などの物品販売の必要から普及したもので,これに対する監視が十分でない。そのため,自動販売機からの金銭窃取事犯や,通貨類似のメダルを使用した商品・つり銭窃取事犯などの自動販売機荒らしが,自動販売機の普及に伴って増加してきており,49年の発生件数は,46年を100とする指数で見ると,133となっている。

I-7表 自動販売機荒らし等の発生件数(昭和45年〜49年)

 次に,万引き事犯の発生件数は,昭和45年の8万4,389件から増加を続け,49年には11万341件となっている。ちなみに,セルフサービス店の営業状況を見ると,45年の約9,400店舗(売場面積418万8,000m2)から47年には約1万600店舗(同558万7,000m2)へと増加してきている。万引き事犯の増加には種々の原因が考えられようが,セルフサービスによる販売方式の普及によって,犯行を容易に行い得る場が拡大してきていることも万引き事犯増加の一因をなしていると思われる。