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 昭和49年版 犯罪白書 第3編/第3章/第1節/3 

3 道路交通法違反事件

 最近10年間について,道路交通法違反事件の取締件数の推移をみると,III-18図のとおりである。違反取締件数は,昭和43年に一時390万件台に減少したが,その後は増加を続けており,48年には,前年より84万5,179件(11.7%)増加して,806万9,481件となっている。昭和48年末現在の運転免許所持者数は,3,077万8,778人であるから,運転免許所持者3.8人に1人が道路交通法違反として取締を受けた計算になる。

III-18図 道路交通法違反取締件数の推移(昭和39年〜48年)

 次に,道路交通法違反事件の取締状況を,違反態様別にみると,III-134表のとおりである。また,昭和48年の違反態様別百分比を,43年と対比してみたのがIII-19図[1],[2]である。まず,48年についてみると,最も多いのが速度違反で,302万6,042件と総数の37.5%を占めており,以下,駐停車違反の21.8%,通行禁止制限違反の6.2%,一時停止違反の5.5%,通行区分制限違反の4.3%,信号無視の4.0%,無免許運転の3.6%,酒酔い及び酒気帯び運転の3.2%という順となっている。次に,III-19図によって,これを43年と比較すると,最高速度違反と駐停車違反が,それぞれ第1位と第2位を占めているが,両者が占める割合は,43年では45.8%であったのが,48年には59.3%となっており,この二つの態様の違反の上昇が目立っている。無免許運転の割合は,43年の8.5%から48年の3.6%へと下降している。

III-134表 違反態様別道路交通法違反事件取締状況(昭和47年・48年)

III-19図 道路交通法違反態様別の百分比(昭和43年・48年)

 III-135表は,道路交通法違反のうちで,危険性の高い違反態様である無免許,酒酔い及び酒気帯び並びに速度違反について,昭和48年の取締件数を47年と対比してみたものである。これによると,無免許,酒気帯び及び速度違反は前年より増加しているが,酒酔い運転は8.6%の減少となっている。交通反則通告制度の適用を受けない無免許,酒酔い及び酒気帯び運転,25キロメートル毎時以上の速度違反が総数中に占める割合をみると,47年が14.8%,48年が13.8%である。酒酔い及び酒気帯び運転の総数中に占める割合は,48年においては3.2%で必ずしも大きくはないが,実数では前年より8.0%増加している。

III-135表 違反態様別道路交通法違反事件取締状況(昭和47年・48年)

 次に,交通犯罪の中で,一般に最も悪質といわれている「ひき逃げ」事件について,昭和38年及び44年以降の推移をみると,III-136表のとおりである。これによると,発生件数は,逐年増加を続けており,44年を100とする指数では,48年は131となっており,38年と比較すると,2.7倍に当たっている。ひき逃げされた事故の死傷者数の増加は著しく,最近5年間では,8,954人増加し,交通事故による全死傷者中に占める割合も,4.5%と最近5年間で最高の比率を示している。また,ひき逃げ事件の検挙率は,48年は86.0%であり,38年と比較すると高率であるが,47年以降は減少の傾向にある。

III-136表 人身事故に伴うひき逃げ事件の累年比較(昭和38年,44年〜48年)

 ところで,道路交通法違反事件は,交通反則通告制度の適用を受ける事件と,それ以外の事件に分けられる。そこで,前掲のIII-134表により,昭和48年における交通反則通告制度の運用状況をみてみよう。違反取締総数806万9,481件のうち,反則告知事件は646万1,802件で,交通反則通告制度の適用率は80.1%である。成人事件の適用率は81.2%,少年事件の適用率は69.4%であり,いずれも前年に比べて上昇している。少年事件の適用率は,成人事件のそれより低率であるが,これは,交通反則通告制度の適用を受けない無免許,酒酔い及び酒気帯び運転並びに速度違反(25キロメートル毎時以上)の占める割合が,少年事件では24.4%と成人事件の12.6%を大幅に上回っているためである。なお,警察庁の追跡調査によると,反則金の納付率(告知件数に対する納付件数の割合)は,各年とも95%以上で,48年は95.4%となっており,交通反則通告制度は,43年7月1日の施行以降順調に運用されているといえる。