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 昭和49年版 犯罪白書 第3編/第1章/第3節/2 

2 少年検察

 少年検察の対象となるのは,原則的には,禁錮以上の刑に当たる罪を犯した14歳以上の少年の事件である。
 昭和48年中に,全国の検察庁が新規に受理した少年事件の被疑者総数(検察庁間の移送,家庭裁判所からの送致及び再起を除いた受理人員数,以下,「新規受理人員」という。)は,40万5,704人である。その内訳をみると,刑法犯(準刑法犯を含む。)が,総数の41.1%に当たる16万6,789人,道交違反が総数の57.0%に当たる23万1,142人,その他の特別法犯が,総数の1.9%に当たる7,773人となっている。48年においては,前年に比べて,刑法犯が4,032人(2.4%)の減,道交違反が3,073人(1.3%)の増,その他の特別法犯が613人(8.6%)の増という状況であり,総数においては,346人(0.1%)の減となっている。
 道交違反を除く新規受理人員について,主要罪名別の人員数とその百分比を前年と比べたのが,III-47表である。これによると,刑法犯については,前年と同様,最も多いのは窃盗であり,次いで,業務上(重)過失致死傷,傷害,恐喝,暴力行為等処罰に関する法律違反という順であるが,昭和44年まで逐年増加を続けていた業務上(重)過失致死傷の受理人員は,45年以来引き続いて減少する傾向を示している。これとは逆に,横領は実人員そのものは大きくないが,5年前の43年に742人であったものが逐年増加し,48年においては2,521人と大幅な増加傾向を示している。次に,特別法犯の新規受理人員の中では,例年と同様,銃砲刀剣類所持等取締法違反が最も多く,10.5%を占めているが,5年前の43年に3,476人であったものが逐年減少し,48年においては814人と大幅な減少傾向を示している。

III-47表 少年被疑事件の検察庁新規受理人員(昭和47年・48年)

 ちなみに,10年前の昭和38年と48年との同様対象の受理人員の百分比を比較したのがIII-5図である。[2]38年の過失傷害の大部分が業務上(重)過失致死傷であることなどを考慮すると,この10年間の百分比の変化が目立っている。

III-5図 少年被疑事件の刑法犯検察庁新規受理人員の百分比の比較(昭和38年・48年)

 III-48表は,昭和48年新規受理人員総数について,年齢層別に,その比率をみたものであるが,これによると,18歳・19歳の年長少年が最も多く,総数の45.8%を占めている。

III-48表 少年被疑事件の年齢層別検察庁新規受理人員(昭和48年)

 検察官は,少年の被疑事件について,捜査を行い,犯罪の嫌疑があり又は嫌疑がなくても家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料する場合には,原則として,その事件を家庭裁判所に送致しなければならないものとされている。昭和48年中における検察庁の少年被疑事件処理状況をみると,既済総数(家庭裁判所からいわゆる逆送を受けた者の処理数を除く。)は,44万7,193人であり,検察庁間の移送を除くと,40万4,651人で,このうち,家庭裁判所送致は,99.7%に当たる40万3,296人である。そのほかは,年齢超過後の処分が196人,不起訴(嫌疑なし)・中止が1,159人となっている。
 少年事件を家庭裁判所に送致するに当たって,検察官は,少年の処遇に関して意見を付することができるが,昭和48年中の家庭裁判所終局決定人員についての検察官の処遇意見を,その意見別にみると,総数の42.4%が刑事処分相当,2.3%が少年院送致相当,13.8%が保護観察相当で,41.5%がその他の意見となっている。
 次に,罪種別にこれをみると,刑事処分を相当とする意見を付したものの割合が最も多いのは道交違反であり,刑法犯がこれに次いでいるが,過失傷害を除く刑法犯についてみると,その割合は3.0%にすぎない。一方,少年院送致及び保護観察処分を相当とする意見を付した者の割合では,いずれも,過失傷害を除く刑法犯が,最も多くなっている(検察官の処遇意見と家庭裁判所の終局決定との合致率については,後出III-62表参照。)
 次のIII-6図は,先に述べたと同じ対象者に対する検察官の処遇意見を,年齢層別にみたものである。この図にみるとおり,18歳・19歳の年長少年に対する検察官処遇意見で最もその割合の多いものは刑事処分相当で,64.5%を占めているが,16歳・17歳の中間少年では33.6%となり,逆に,保護観察相当,その他の意見は,年少になるに従って高率になっている。このように,年齢層によって処遇意見の比率にかなりの差異が認められる。更に,検察官の処遇意見を年齢層別に加えて罪種別に検討してみたのが,III-49表である。過失傷害を除く刑法犯についてみると,年長少年の9.8%が刑事処分相当,14.3%が少年院送致相当の意見になっているが,中間少年では,刑事処分相当が1.3%,少年院送致相当が8.7%となり,保護観察相当意見には大差がないものの,その他の意見は,年少になるに従って高率になっている。このように,通常の刑法犯についてみても,年齢層による差異は明らかである。ちなみに,昭和48年における成人の起訴率は,過失傷害を除く刑法犯が53.7%,道交違反が95.9%である。

III-6図 年齢層別検察官処遇意見の比率(昭和48年)

III-49表 罪種別・年齢層別検察官処遇意見の比率(昭和48年)

 検察官が取り扱う少年事件には,このほかに,家庭裁判所から刑事処分相当として,又は年齢超過のため,検察官に送致されるいわゆる逆送事件がある。送致を受けた事件は,年齢超過による場合を除き,検察官は,原則として公訴を提起しなければならないことになっている。
 昭和48年中に家庭裁判所から逆送された少年の数は5万7,982人であるが,そのうち,刑事処分相当の理由による者が92.5%に当たる5万3,653人(16歳以上18歳未満8,987人,18歳以上20歳未満4万4,666人)であり,残りの7.5%に当たる4,329人は,年齢超過の理由によるものである。また,刑事処分相当の理由による5万3,653人のうち,刑法犯は21.3%,特別法犯は0.3%,道交違反は78.4%となっているが,このうち,18歳・19歳の年長少年の占める割合は,刑法犯で91.2%,業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯で95.4%,特別法犯で94.1%,道交違反で81.0%を占めている。
 そこで,家庭裁判所から刑事処分相当を理由として逆送された事件について,昭和48年中の検察庁の処理状況をみると,III-50表のとおりである。処理総数4万8,967人のうち,道交違反が3万8,544人で,総数の78.7%を占め,刑法犯が1万289人で21.0%を占めている。起訴された者の内訳をみると,起訴総数4万5,896人のうち,80.1%に当たる3万6,762人が,道交違反によって占められ,刑法犯は,総数の19.6%の9,011人であり,特別法犯は総数の0.3%にすぎない。なお,刑法犯の93.2%までが業務上(重)過失致死傷である。

III-50表 検察庁における逆送少年被疑事件の処理状況(既済)(昭和48年)

 また,起訴総数の97.1%が略式命令請求又は即決裁判請求であり,公判請求は2.9%にすぎない。起訴のうちに占める公判請求率をみると,刑法犯は13.1%,特別法犯は70.7%で,道交違反はわずかに0.1%にとどまっている。公判請求人員総数1,315人のうち,刑法犯がその90.0%に当たる1,184人を占めている。これを主要罪名別にみると,業務上(重)過失致死傷の657人が最も多く,以下,窃盗,強制わいせつ,強姦・同致死傷,傷害の順になっている。
 次に,昭和48年中に起訴された少年を,18歳・19歳の年長少年と16歳・17歳の中間少年と区分して,各起訴区分の構成比をみたのがIII-7図である。これによると,公判請求の大部分を占める刑法犯では,90.5%までが年長少年である。また,略式命令請求(即決裁判請求を含む。)では,年長少年の事件は,総数の82.0%,刑法犯の90.2%,特別法犯の97.2%,道交違反の80.2%を占めている。なお,中間少年に関する公判請求の大多数は,業務上(重)過失致死傷で,それ以外の罪名によって公判請求された者は47人にすぎない。

III-7図 少年被疑事件の年齢層別起訴区分の百分比(昭和48年)