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 昭和49年版 犯罪白書 第2編/第4章/第1節/1 

第1節 仮釈放

1 概説

 仮釈放とは,懲役又は禁錮に処せられて刑事施設に拘置されている者,家庭裁判所の少年院送致決定により少年院に収容されている者,補導処分に付されて婦人補導院に収容されている者,拘留の刑に処せられて拘留場に拘置中の者及び罰金又は科料を完納できないため労役場に留置されている者を,収容期間満了前の適当な時期に,行政官庁の処分によって仮に釈放することをいう。この場合,刑務所からの仮釈放を仮出獄と,少年院又は婦人補導院からの仮釈放を仮退院と,拘留場又は労役場からの仮釈放を仮出場と,それぞれ区別して呼んでいる。仮出獄又は仮退院を許された者は,すべて保護観察に付され,その期間中に遵守すべき遵守事項に違反したり,更に罪を犯し罰金以上の刑に処せられた場合には,再び矯正施設に収容されることがあるのに対し,仮出場を許された者は,保護観察に付されることも,遵守事項を遵守する義務もなく,したがって,釈放後,条件違反などによって処分が取り消されて再収容されることはない。
 改正刑法草案では,仮出獄の呼称を仮釈放と改めこの制度を承継しているが,仮釈放の期間が経過する前に刑の執行が終了する場合を認めようとしている点,2個以上の自由刑の執行を受ける者に対して仮釈放が可能となる時期に関する規定を導入しようとしている点等,現行法にかなりの修正が加えられている。
 先に述べた仮出獄・仮退院・仮出場の処分は,刑法28条及び30条1項にいう行政官庁としての地方更生保護委員会(全国に8か所,高等裁判所の所在地に置かれている。)が,委員3人で構成する合議体の決定に基づいて行う。
 仮釈放は,矯正施設に収容されている者の円滑な社会復帰を援助し,それらの者の自立自助を基調とした改善更生を目指して行われる処遇の転換であり,犯罪者の更生と再犯の防止に資するための目的をもった行政行為である。したがって,施設内処遇を続けるのがよいか社会内処遇に移すのがよいかは,地方更生保護委員会が本人の性格・行状・態度及び能力,施設内での成績,帰住後の環境などを考慮して決定することとされている。このように,仮釈放は,矯正施設に収容されている者に恩恵として与えられるものではなく,また,それらの者が有する権利の行使でもない。仮釈放は,通常の場合,矯正施設の長が在監者又は在院者について仮出獄,仮出場又は仮退院を許すことが相当であると認めたとき,その施設の所在地を管轄する地方更生保護委員会に対し申請をし,それに基づく審理の結果行われる。その申請が棄却又は却下されて仮釈放が許されない場合,行政不服審査法に基づく審査請求はできない。
 最近5年間の,地方更生保護委員会における仮釈放の申請受理及び許否決定の状況は,II-91表のとおりである。

II-91表 仮釈放の種類別新受・決定の状況(昭和44年〜48年)

 仮釈放の申請を受理した人数の総数は,昭和42年までは3万1,000人を超えていたが,43年からは3万人台を割り,その後逐年減少し,48年には2万1,632人となっている。申請受理人員の減少は,主として矯正施設収容者の減少によるものである。
 同表でみるとおり,近年,地方更生保護委員会における仮釈放の申請受理人員が減少傾向にあるのに伴い,仮釈放許可人員も逐年減少している。ただ,仮釈放の棄却のみは,昭和46年以降多少増加傾向を示しており,48年においては,その実数では前年より46人の減となってはいるものの,棄却率では0.4%上昇して11.4%となっている。
 以下,仮釈放申請受理総人員の9割弱を占める仮出獄について検討し,少年院からの仮退院と不定期刑受刑者の仮出獄については,第3編第1章第7節少年の仮釈放及び保護観察において述べることとする。
 なお,仮出場,婦人補導院仮退院の申請,許可人員は,昭和48年においては,わずかにそれぞれ3人にすぎないので,それらに関する記述は省略する。