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 昭和49年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/4 

4 刑事補償

 憲法第40条は,「何人も,抑留又は拘禁された後,無罪の裁判を受けたときは,法律の定めるところにより,国にその補償を求めることができる。」と規定している。刑事補償法は,これを受けて,無罪の裁判を受けた者又は刑事訴訟法の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けたが,もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由がある者が,未決の抑留又は拘禁を受けたとき,又は刑の執行若しくは死刑のための拘置を受けた時は,国に対して補償を請求することができることとし,補償金の算定の基準となる金額を定めている。同法の定める補償金額は,最近における経済事情にかんがみ,昭和48年6月22日,刑事補償法の一部を改正する法律が施行され,(1)未決の抑留若しくは拘禁又は自由刑の執行等による身体の拘束を受けていた場合における拘束1日についての補償金の日額の上限を2,200円(改正前は1,300円)に,(2)死刑の執行を受けた場合の補償金の最高額及び死刑の執行を受けたことによって生じた財産上の損失額が証明された場合にその損失額に加算する額をそれぞれ500万円(改正前は300万円)に,それぞれ引き上げられた。以下,最近における刑事補償請求事件の処理状況を概観してみることとする。
 まず,最近5年間における刑事補償事件の終局区分別人員をみると,II-30表のとおりである。各年とも,抑留又は拘禁による補償がほとんどであり,刑の執行による補償は極めて少ない。昭和47年についてみると,抑留又は拘禁による補償決定のあった人員は62人,総補償日数は5,419日,総補償金額は519万3,100円となっている。

II-30表 刑事補償請求事件の終局区分別人員(昭和43年〜47年)

 次に,昭和45年から47年までの3年間について,刑事補償決定人員の1日当たりの補償金額の分布をみると,II-31表のとおりである。1日当たりの補償金額の最高である1,300円の者が総数中に占める割合は,45年が81.8%,46年が60.0%,47年が85.5%となっており,最高額の者がかなり大きな割合を占めている。

II-31表 刑事補償決定人員1日当たりの補償金額(昭和45年〜47年)

 最後に,最近3年間に補償決定のあったものを補償日数別にみると,II-32表のとおりである。昭和47年では,補償日数が100日を超える者は,総数の22.6%を占める14人で,1人平均日数は87日となっている。

II-32表 補償決定人員の補償日数(昭和45年〜47年)