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 昭和49年版 犯罪白書 第1編/第3章/第1節/1 

1 犯罪発生の全国的推移の概観

 まず,戦後の刑法犯発生状況を有責人口10万人当たりの発生件数(本節において,以下,発生率という。)でとらえ,全刑法犯及び前記6罪名別にみたのが,I-75表である。全刑法犯についてみると,昭和23年の3,002が最高であり,48年の2,061が最低であって,21年から48年まで発生率はこの間で上下し,最高と最低の比は1.46である。同様にして,業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯及び6罪名について,その発生率の推移を最高・最低の比の上からみると,業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯では23年が最高,48年が最低でその比は2.12,窃盗では23年が最高,48年が最低でその比は2.01,詐欺では25年が最高,46年が最低でその比は5.35,殺人では25年が最高,46年が最低でその比は2.26,傷害では33年が最高,21年が最低でその比は6.64,強姦では35年及び36年が最高,21年が最低でその比は7.83,業務上(重)過失致死傷では45年が最高,21年が最低でその比は135.67となっている。

I-75表 主要罪名別発生率の推移(昭和21年〜48年)

 これからもみられるように,刑法犯の発生は,業務上(重)過失致死傷を除き全般的に漸減傾向を示しているが,罪名によって犯罪発生の増減の方向,程度,時期などの推移が異なり,また,第3編第3章第1節で触れるように成人と少年の間にも相違が入られる。このような,それぞれの推移の原因については,業務上(重)過失致死傷の近年における著しい増加がある程度まで自動車保有台数の増加と相関するであろうことは容易に理解できるが(第3編第3章第1節参照),その他の犯罪についてもそれぞれの経済的,社会的,文化的背景の存在するであろうことが想定される。また,この経済的,社会的,文化的背景は全国均一に存在し,推移するものでなく,地域的に特徴を有しているものと考えられる。
 以上のような観点から犯罪現象をより正しく理解するため,以下,罪名別にその発生の推移を社会的条件との関連に注目しながらながめてみることとする。