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 昭和49年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/6 

6 その他の刑法犯

 放火,略取・誘拐,文書偽造・有価証券偽造及び賭博犯罪を「その他の刑法犯」として,本項で取り上げることとする。放火及び略取・誘拐は,発生件数では比較的少ないが,一般社会に与える影響の大きい犯罪であり,文書偽造・有価証券偽造は経済取引との関係が深く,賭博犯罪は,暴力団の活動との関連においてその動向が注目されるからである。
 昭和38年及び最近5年間における「その他の刑法犯」の発生件数及び検挙人員の推移は,I-29表及びI-30表のとおりである。放火については,発生件数では45年及び46年と著しい増加を示したが,47年以降は減少している。検挙人員では,45年に一時減少した後,46年には急激に増加したが,47年及び48年と減少している。46年に放火事犯が激増したのは,過激派集団によるいわゆる火炎びん闘争が多発したことによるものと思われるが,47年に至って,過激派集団による暴力犯罪も下火になり,また,同年5月14日に火炎びん取締法が施行されたことなどもあって,同年以降は放火事犯も減少している。

I-29表 放火等発生件数(昭和38年,44年〜48年)

I-30表 放火等検挙人員(昭和38年,44年〜48年)

 次に,略取・誘拐については,発生件数及び検挙人員ともに,起伏を示しながらも減少する傾向にある。この種の犯罪は,発生件数こそさほど多くはないが,一度発生すると,相次いで連鎖反応的に発生するおそれがあるため,特に検挙率の高いことが望まれる。48年の略取・誘拐の検挙率は99.3%の高率となっており,前年の98.3%を上回っている。
 文書偽造・有価証券偽造については,発生件数では,昭和45年に一時増加した後,47年まで減少したが,48年には相当の増加を示し,過去5年間の最高の数字となっている。また,検挙人員では,46年まで増加した後,47年には一時減少したが,48年には再び増加している。
 次に,賭博犯罪についてみると,発生件数及び検挙人員とも,昭和45年に一時増加した後,46年には減少したが,47年以降は漸増している。そして,過去10年間における賭博犯罪の増加は著しく,発生件数では2.4倍,検挙人員でも2.1倍の増加となっている。
 ところで.賭博犯罪には,暴力団の関与する職業的,営利的な賭博から,一時の娯楽の度を越した程度の賭博まで,多重多様であるので,賭博犯罪の状況を更に詳細にみるため,単純賭博,常習賭博及び賭博場開張等に分けて,昭和38年及び最近5年間の発件数及び検挙人員を示したのが,I-31表及びI-32表である。48年の発生件数及び謙虚人員については,単純賭博では前年より増加しているのに対して,常習賭博及び賭博場開張等では減少している。しかし,過去10年間の発生件数の推移をみると,単純賭博では1.7倍の増加であるにすぎないのに,常習賭博では8.6倍,賭博場開張等では3.8倍と著しく増加していることが注目される。

I-31表 賭博犯罪発生件数(昭和38年,44年〜48年)

I-32表 賭博犯罪検挙人員(昭和38年,44年〜48年)

 また,賭博犯罪は暴力団の資金獲得の手段とても利用されているので,賭博犯罪の検挙人員のうち暴力団関係者の占める割合をみると,I-33表のとおりである。これによると,昭和48年の検挙人員中における暴力団関係者は,総数の47.6%に当たる7,441人に上っている。賭博犯罪が暴力団の資金源に密接な関係をもち,その手段がますます巧妙化していることを考慮するとき特に暴力団関係者の関与することの多い常習賭博及び賭博場開張等に対する厳重な取締が要請される。

I-33表 賭博犯罪倹挙人員中暴力団関係者の占める比率(昭和44年〜48年)