2 最近の特徴 以上のような最近のアメリカ,イギリス,ドイツ及び我が国における女性犯罪の動向を通じてみると,次のような特徴が認められる。 (1) 最近の上記各国における女性刑法犯(交通に起因する過失致死傷を除く。以下,本項では同じ。)の中で,女性の占める割合は13.6%ないし17.2%である。各国における法制等の差異を考慮に入れるにしても,アメリカ,イギリス及びドイツにおける男女刑法犯中に占める女性の比率は,我が国の刑法犯中に占める女性の割合よりも大きいと思われる。 (2) 我が国では男性刑法犯は減少しているのに対して,女性刑法犯は増加傾向にあるといえる。欧米3か国においても,女性刑法犯は,男性刑法犯の増加率を上回る比率で増加している。 (3) 上記各国において,刑法犯総数中に占める女性の割合は,窃盗,詐欺などの一般的な財産犯及び殺人では比較的高いが,強盗,恐喝などの暴力を伴う財産犯では比較的低率となっている。また,アメリカを除く他の3か国では,暴行,傷害などの身体犯における女性の割合も低率である。我が国の刑法犯総数中に占める女性の割合は,欧米3か国と比較して,強盗,暴行及び傷害では低く,窃盗ではほぼ同率であるが,殺人及び放火では高くなっている。これは,我が国の女性犯罪の特徴を示唆するものとして興味深いところである。 (4) 上記各国における女性犯罪の動向として,特に,窃盗,殺人,放火,強盗及び恐喝において女性犯罪が増加する傾向にあることが注目される。また,暴行及び傷害についても,欧米3か国では同様に増加しており,我が国では減少しているとはいうものの,その減少率は男性のそれよりも低くなっている。 このように,最近のアメリカ,イギリス,ドイツ及び日本における女性刑法犯は,男性のそれと比較して,量的にははるかに少ないが,男性刑法犯を上回る勢いで増加しており,特に,窃盗などの財産犯及び殺人,放火などの凶悪な犯罪の増加傾向が目立っている。また,従来から男性型犯罪とされてきた強盗,恐喝などの暴力を伴う財産犯の増加が注目される。
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