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 昭和48年版 犯罪白書 第3編/第1章/第5節/2 

2 処遇の概要

(1) 教科指導

 昭和47年の少年院新収容者中,義務教育未修了者は300人,新収容者総数中の10.2%に当たる(前掲III-87表参照)。
 少年院においては,義務教育未修了の収容少年に対し,義務教育修了者の資格を得させることを目的として,初等少年院を中心に,教育関係法令に準拠した中学校課程の教科指導を実施している。少年院の長は,教科を修了した者に対して,学校教育法により設置された各学校の長が授与する卒業証書と同等の効力を有する修了証明書を発行できることとなっている。矯正統計年報により,昭和47年における教科指導の実施状況をみると,義務教育未終了者で在院中に義務教育課程の修了証明書を受けた出院者は246人で,全未修了者の約87%となっている。
 なお,義務教育修了者に対しても,中学校課程の教科指導により,学力の補足や高等学校進学予定者への補習がなされているほか,高等学校通信教育も行われている。

(2) 職業補導

 昭和47年の少年院新収容者中,無職の者は例年約半数を占めている(新収容者総数の53.6%,前掲III-88表参照)。また,収容少年の職業歴をみると,職業生活に安定できるような知識・技能・態度に欠ける者が多い。このような収容者に対して,労働を重んずる態度と規則正しい勤労の習慣を養わせ,職業生活に必要な知識・技能を授けることを目的として,職業補導が行われている。
 昭和47年末現在実施している主な職業補導の種目は,農業関係(農耕,園芸,畜産),木材加工関係(木工),金属加工関係(機械,板金,溶接),サ-ビス関係(理容・美容,家事サービス,事務,和文タイプ)等である。このほか,自動車,電気工事,簿記,英語,ラジオなどの講座について,通信教育が実施されており,46年4月から47年3月までの受講者総数は,公費・私費による者合わせて1,520人となっている。
 中等少年院及び特別少年院では,一般に職業補導を重視しているが,一定の技能習得能力があり,技能の習得によって更生する可能性が高いとみられる者を対象とし,職業訓練法にのっとって,一般の専修職業訓練校と同内容の職業訓練が行われ,訓練を修了した者に対しては,労働省職業訓練局長から職業訓練履修証明書が交付される。昭和47年における証明書の取得者数は,III-92表に示すとおりである。また,このほか,電気工事士,自動車整備士,理容師,,美容師を養成する学校を設けている施設が13庁あり,それぞれ担当大臣の指定を受けて指導が行われている。47年においては,自動車整備士24人,電工28人,理容師36人,美容師4人が所定の課程を修了し卒業している。

III-92表 職業訓練履修証明書取得状況(昭和47年)

 少年院では,収容少年に,各種の資格・免許を取得させようと努めているが,昭和47年におけるその取得状況は,III-93表のとおりで,各種の資格・免許の取得者の総数は,4,129人となっている。取得した種目のうち,最も多いものは珠算であるが,そのほか,溶接工,自動車運転が多い。

III-93表 資格・免許取得状況(昭和47年)

(3) 生活指導

 少年院における生活指導の目標は,少年の反社会的な考え方や行動様式などを改め,健全な社会性を発達させることにある。これは,少年院における矯正教育に対する最も基本的な要請であるといえよう。このため,在院生活の経過に応じ,指導は計画的なプログラムのもとに行われている。すなわち,入院当初には,日常生活における基本的な行動様式を身に付けさせることを主眼として指導を行い,期間の経過に従って漸次必要な社会的生活訓練を与え,最後に出院前教育として出院後の生活設計を立てさせる指導を行っている。
 具体的な指導内容は,道徳教育のほか,学級活動,社会教育講座,教育相談,クラブ活動の指導,篤志面接委員による面接,個別・集団カウンセリング,その他の心理療法などである。その他,レクリエーション活動も活発に行われているが,余暇時間など収容生活のあらゆる場面は個別的な生活指導の場と考えられて指導が行われている。また,学寮生活集団における公式的な係組織の編成や,夜間における討議集会など,集団活動を通じての生活指導は,最近特に重視され,活発化している。
 法務省矯正局の調査によれば,昭和47年中のクラブ活動においては,所属者総数6,130人,クラブ数516,クラブ活動の実施回数1万9,496回となっている。実施回数の多いものは,美術・工芸,音楽,書道,文芸など文化系統のクラブ活動であるが,運動系統,職業技能系統のクラブ活動も活発に行われている。
 昭和47年中の篤志面接委員による面接指導は,法務省矯正局の調査によれば,9,232回行われている。その内容は,精神的相談,職業相談,家庭相談,教養相談など広い範囲にわたっており,少年の心情の安定や自主的な生活意欲の喚起等に大きな力となっている。
 なお,生活指導として行われているものではないが,宗教的関心を有する少年や信仰を求める少年のためには,民間宗教家による宗教的指導の機会が与えられている。

(4) 医療衛生と給養

 昭和47年中の出院者3,534人のうち,在院中に傷病によって休養したことのある者(教育訓練などの日課を停止し,病室に収容して医療を施すものを休養患者という。)は,1,234人である。休養患者1人当たりの休養日数は42日となっているが,休養患者の中には,医療少年院に収容され,比較的長期間医療を受けた者が含まれている。
 休養患者の病名では,非伝染性の呼吸器系疾患(その大部分は急性呼吸器系疾患である。)と消化器系疾患が最も多い。前者にあっては,休養患者総数の30.6%,後者にあっては,19.4%を占めている。
 矯正施設では,収容者の健康管理には細心の注意が払われ,中でも伝染病の予防については,日本脳炎やインフルエンザ等の予防接種,食器その他の消毒,検便の励行など,格別の配慮がなされている。
 収容者の日常生活に必要な衣類,寝具,学用品などは,貸与又は給与することになっている。ただし,紀律や衛生に害がない限り,自弁品の使用が許される場合がある。
 食糧の給与は,1人1日3,000カロリーであって,昭和47年度の1日1人当たりの主食費は,69.88円,副食費は54.30円,心情安定食7.48円となっている。なお,年1回の誕生日菜,年11回の祝祭日菜(それぞれ25円),正月菜(300円)がこのほかに認められており,国民一般の食習慣に近付けるよう努力が続けられている。