第3編 特殊な犯罪と犯罪者
第1章 少年犯罪
第1節 概況 昭和47年の少年犯罪は,量的にみると,40年代の減少傾向を示す流動的な推移の一環としてとらえられるが,その内容についてみると,最近の世相を反映して,享楽的傾向の強い犯罪が,さまざまな形態をとって現れており,少年犯罪における多様化の様相がうかがわれる。 次に,昭和47年の少年犯罪等にみられる主要な特色について,摘記する。 (1) 少年犯罪は,量的にみると,前年に続いて,減少傾向にある。業務上(重)過失致死傷等を除いた少年の主要刑法犯検挙人員は,前年より5,304人の減少,同人口比(少年人口1,000人に対する検挙人員の割合)は,前年より0.3の減少となっている。 (2) 前年との比較において増加が目立つ犯罪は,刑法犯においては,横領及び殺人であり,特別法犯においては,毒物及び劇物取締法違反である。横領は,昭和44年以降,逐年増加を続けており,47年には前年より50%の増加を示しているが,最近の自転車ブームを反映した自転車等の占有離脱物横領が,その大半を占めている。殺人は,3%とわずかな増加にすぎないが,全般的な減少傾向の中にあって,罪質の重い犯罪が増加している点が注目される。少年の毒物及び劇物取締法違反は,例年皆無に近かったが,シンナー等乱用の規制を目的として,同法の一部が改正され,シンナー等の摂取,吸入等の行為が罰せられることになり,47年8月1日から施行されたことにより,47年においては,同法違反が一挙に増加した。 (3) 道路交通に起因する少年の業務上(重)過失致死傷の検挙人員は,前年より大幅に減少し,罪名別順位では首位から2位に落ち,減少傾向が一段と顕著になった。 (4) 前年まで急増を続けていたシンナー等乱用少年の補導人員は,前年に比較して,28%の大幅な減少を示した。これは,前述の法改正に伴う効果によるものと考えられる。 (5) 少年犯罪の低年齢層化の傾向は,全般的減少傾向の中においても,依然として認められる。少年犯罪は,各年齢層とも減少傾向を示しているが,その減少幅は,年齢層が低下するほど小さくなっており,この傾向は,人口比においても,同様に認められる。また,14歳未満の触法少年についてみると,昭和47年における補導人員は,前年に比較して,わずかながら,実数,人口比とも増加しており,14歳以上の少年刑法犯検挙人員の動向とは,対照的な動きを示している。なお,低年齢層化の進行に伴って,検挙人員中に占める学生・生徒の割合が増大してきていることも注目される。 (6) 最近における社会一般の享楽的風潮が少年犯罪にも反映し,享楽的動機による犯行が目立っており,その例は,少年犯罪の首位を占める窃盗ばかりでなく,自転車等の占有離脱物横領,賭博,薬物乱用,性犯罪,交通犯罪など,多様な側面においてみられる。
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