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 昭和48年版 犯罪白書 第2編/第3章/第3節/2 

2 更生保護会

 昭和48年6月1日現在において,宿泊保護施設を備え,法務大臣の認可に基づき直接犯罪者に対する保護を行っている更生保護会は,全国に111団体を数え,これは,昭和46年末現在に比べ,4団体の減少となっている。111団体の施設の内訳及び収容定員は,II-110表のとおりである。すなわち,成人を対象とするもの33,青少年を対象とするもの11,両者を対象とするもの67であり,また,女子のみあるいは男女ともに収容するものが13施設である。これらの施設の収容定員の総数は3,233人に及んでいる。

II-110表 更生保護会の種類別保護施設数と収容定員(昭和48年6月1日現在)

 ところで,法務省保護局が実施した昭和47年2月末日現在の調査によれば,全国の被保護者の総数は1,539人で,その内訳は,委託による保護では,更生(緊急)保護が541人(35%),救(援)護が550人(36%),家庭裁判所の委託が85人(6%)であり,残りの363人(24%)は,委託によらないで更生保護会が独自に保護している,いわゆる任意保護の対象者であった。なお,上記の被保護者総数が当時の収容定員総数に占める率(収容率)は46%程度にすぎなかった。ここ数年来,更生保護会においては,このように,低い収容率が続いており,これが更生保護会全般の運営に問題を投げかけている。
 次に,昭和47年2月末現在更生保護会に在住していた上記の1,539人について,同じく法務省保護局が48年2月末に実施した1年間の追跡調査から幾つかの項目を拾うと,1年後もなお在住していた者は205人(13%)いるが,残りの退会者について更生保護会での在住期間をみると,3月以内と3月を超え6月以内がそれぞれ3分の1に近い。
 退会時の行き先別をみると,就職先が34%で最も多く,不詳17%を除くと,下宿・借家15%,親もと11%,その他の親族のもと9%の順になっている。また,退会時の所持金をみると,わずか5,000円以内の者が22%もあり,1万円以内を合わせると35%に達している。5万円を超える所持金を持って退会した者は15%にとどまっている。所持金の高は,在会期間の長さに比例する傾向がみられ,また,父母,妻子方又は下宿・借家等を行き先とする者に多い傾向がある。
 次に,再犯状況をみると,1,539人のうち,1年間に再逮捕(道路交通法違反を除く。)された者は,334人(22%)である。なお,1年後も更生保護会に居住していた者だけについてみると,再逮捕率は5%にとどまっている。また,退会時の所持金が1万円以下であった者の再逮捕率は30%に及び,5万円を超える者の場合の再逮捕率15%と有意な開きがある。更に,更生保護会を無断退会した者の再逮捕率は高率(37%)で,円満退会者のそれが20%弱であるのと対照的である。
 II-111表は,昭和46年に刑務所を出所した受刑者の出所時の帰住先を示したものである。これによると,全出所受刑者の2割は更生保護会を帰住先にしており,その比率は,受刑前歴が増すに従って増大し,入所度数5度以上になると,半数に近い者が更生保護会を一応の足がかりにしている。これによっても,更生保護会の役割の大きいことが知られる。また,同表に示されている多数の累犯者を始めとして,家庭環境に恵まれない者,心身に欠陥のある者,問題性癖のある者など,更生保護会は,犯罪者の中でも特に困難な条件を抱えた者の収容・処遇に当たっているのであって,これらの施設の経営基盤と処遇態勢の強化を図ることが,現在の重要な課題の一つとなっている。

II-111表 出所受刑者の入所度数別更生保護会帰住人員(昭和46年)