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 昭和48年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節/1 

第2章 矯正

第1節 刑務所における処遇

1 刑務所における収容状況

(1) 概況

 刑務所は自由刑(懲役,禁錮及び拘留)の執行を主要な任務とする行刑施設であって,法務省設置法13条の3により置かれる監獄である。監獄には,ほかに,主として未決拘禁者を収容する拘置所がある。
 最近5年間における刑務所及び拘置所の1日平均収容人員は,II-43表に示すとおりであり,昭和47年の1日平均収容人員は,4万8,895人(うち,女子は1,096人で,全体の2.2%に当たる。)で,41年以降持続してきた減少傾向を初めて破り,46年に比べて,764人増加している。うち,受刑者は4万509人で,全収容者の約83%を占めており,前年に比べて470人増加している。なお,未決拘禁者のうち,被告人は7,715人で,46年における減少の後,わずかに増加している。

II-43表 刑務所・拘置所一日平均収容人員(昭和43年〜47年)

 入出所総人員についてみると,II-44表に示すとおり,昭和47年は23万1,587人であり,新たな入所は,直入(刑務所,拘置所以外からの新たな入所をいう。)6万9,234人,復所6,201人で,合計7万5,435人となっている。なお,施設間の移送による入出所は,4万270人である。同表により,これら入出所人員の最近5年間の推移をみると,入出所とも,45年までは漸減し,46年にわずかに増加した後,47年は,直入が減ったこと等の理由により,再び減少している。

II-44表 刑務所・拘置所における入出所総人員(昭和43年〜47年)

 次に,受刑者について,その入出所の状況をみたのが,II-45表である。昭和47年の入所人員は2万9,714人であり,そのうち,2万8,423人は,この1年間に新たに刑が確定して入所した者で,仮釈放の取消などによる復所者は1,291人である。入所人員は,42年以降45年まで減少を続けてきたが,46年に若干増加し,47年は,前年に比べ1,138人増加している。出所人員は2万9,098人であり,その内訳は,満期釈放1万1,789人,仮釈放1万6,436人,その他刑執行停止などによる出所人員873人である。出所人員中,釈放者についてみると,満期釈放,仮釈放ともに,43年以降減少傾向を続けてきたが,47年は満期釈放が前年に比べてわずかに増加している。なお,釈放者中に占める仮釈放者の割合は逐年上昇してきたが,47年はやや減少し,58.2%となっている。

II-45表 受刑者の入出所事由別人員(昭和43年〜47年)

(2) 新受刑者

 裁判の確定により,1年間に新たに刑務所に入所した受刑者を新受刑者(死刑の執行を受けた者を含む。)という。

ア 新受刑者の数

 昭和47年の新受刑者は,2万8,423人である。42年以降戦後最低の記録を更新し続けてきたが,46年に初めて増加し,47年は前年に続き1,226人の増加となっている(II-46表II-7図参照)。

II-46表 新受刑者の年齢層別・性別人員の比率(昭和43年〜47年)

II-7図 新受刑者人員累年比較(昭和20年〜47年)

イ 新受刑者の性別

 II-46表に示すとおり,昭和47年の新受刑者のうち,女子は568人で,総数に対する比率は2,0%であり,前年に比べて,実数で55人,比率で0.1%増加している。

ウ 新受刑者の年齢

 II-46表によって,昭和47年の新受刑者の年齢層別構成比をみると,20歳代の者が総数の半数近く(46.9%)を占めて最も多く,30歳代の者がこれに次いで,ほぼ3分の1(33.1%)を占めている。また,これを男女別にみると,男子では,20歳代の者(47.5%)が最も多く,以下,30歳代(33.0%),40歳代(13.6%),50歳以上(5.0%),20歳未満(0.8%)の順となっている。一方,女子では,30歳代の者(34.2%)が最も多く,以下,40歳代(29.0%),20歳代(20.2%),50歳以上(16.2%),20歳未満(0.4%)の順となっており,男子より年長者の占める比率が高く,40歳以上の者では,男子の2.4倍強の比率を示している。

エ 新受刑者の国籍

 新受刑者を国籍別にみると,II-47表のとおりであり,昭和47年の新受刑者中,外国人の構成比は3.2%で,この比率は逐年減少してきたが,47年は前年にほぼ等しい。

II-47表 新受刑者の国籍別人員と比率(昭和45年〜47年)

オ 新受刑者の刑種と刑期

 昭和47年の新受刑者を刑種別にみると,II-48表のとおりで,懲役は90.6%(2万5,738人)を占めており,禁錮が9.3%(2,636人),拘留が0.1%(42人),死刑が0.0002%(7人)となっている。逐年,その構成比が漸増してきた禁錮が,前年に比べて減少(1.7%)し,逆に,構成比の漸減してきた懲役が,前年に比べて増加(1.8%)しているのが目につく。

II-48表 新受刑者の刑種別人員と比率(昭和43年〜47年)

 次に,新受刑者の刑期をみると,II-49表のとおりで,昭和47年においては,懲役について,刑期6月以下の者が16.3%と漸増の傾向をみせ,これらを含む刑期1年以下の者は48.9%で,半数近くを占めており,その割合は42年以降逐年増加を続けてきた。46年には0.1%減少したが,47年は再びわずかながら増加している。無期は51人で,0.2%に当たる。禁錮については,6月以下の者が41.5%,6月を超え1年以下の者が52.3%で,刑期1年以下の者が大部分を占めており,42年以降漸増の傾向にあった3月を超え6月以下の者の割合は,45年を頂点として漸減し,47年は前年に比べて1.2%減少している。

II-49表 新受刑者の刑期別人員の比率(昭和43年〜47年)

カ 新受刑者の罪名

 新受刑者の罪名についてみると,II-50表に示すとおりで,昭和47年においては,その92.4%が刑法犯(準刑法犯を含む。)であり,特別法犯は7.6%にすぎないが,前年に引き続き漸増している。刑法犯のうちでは,窃盗が34.4%と最も多く,以下,業務上(重)過失致死傷の15.9%,傷害・暴行の8.7%,詐欺の7.2%,恐喝の4.8%,強姦の4.3%の順となっている。詐欺,殺人,暴力行為等処罰に関する法律違反,恐喝,放火及び住居侵入は,前年に比べて構成比及び実人員ともにわずかながら増加している。逐年漸増の傾向を示してきた業務上(重)過失致死傷は,構成比において1.6%,実人員において235人前年より減少している。このほか,構成比及び実人員が,前年に比して減少しているものに,強姦及びわいせつがあり,窃盗及び傷害・暴行は,構成比において漸減の傾向をみせている。特別法犯では,道路交通法違反が3.6%で最も多く,覚せい剤取締法違反の1.6%,売春防止法違反の0.6%がこれに次いでいる。売春防止法違反は,減少傾向が続いているが,覚せい剤取締法違反は,構成比において約2倍となり,47年は0.8%(244人)の増加をみせている。女子については,同表に示すとおり,窃盗が50.4%で最も多く,以下,売春防止法違反の17.3%,詐欺の10.0%,殺人の7.6%の順となっている。

II-50表 新受刑者の罪名別人員の比率(昭和45年〜47年)

キ 新受刑者の累犯と非累犯の別

 新受刑者のうち,有期懲役受刑者を,刑法上の累犯者とそれ以外の者とに分けて,その比率をみると,II-51表のとおりである。昭和47年においては,その50.2%が累犯である。27年以来,毎年約56%ないし58%を占めていた累犯は,41年に52.4%に低下し,その後は51又は52%を持続してきたが,46年は50%強に低下し,47年は更にわずかに減少している。女子については,45年までの数年間,累犯増加の傾向がみられたが,47年は前年の減少に引き続き2.3%減少している。

II-51表 新受刑者の犯数別人員の比率(昭和43年〜47年)

ク 新受刑者の初入と再入の別

 新受刑者を入所度数別にみると,II-52表のとおりであり,入所初度の者の割合は,昭和45年に若干の減少をみただけで,逐年わずかながら増加してきたが,47年は48.2%とわずかに減少している。なお,男女別にみると,男子が48.2%,女子が47.4%である。

II-52表 新受刑者の入所度数別人員の比率(昭和43年〜47年)

 昭和47年における新受刑者を初入者と再入者(入所2度以上の者)とに分けて,罪名別の構成比を比較してみたのが,II-53表である。刑法犯についてみると,初入者では,業務上(重)過失致死傷が30.2%と最も多く,窃盗の21.7%がこれに次いでおり,再入者では,窃盗が46.1%と半数近くを占め,傷害・暴行の9.7%,詐欺の9.4%がこれに次ぎ,初入者に多い業務上(重)過失致死傷は,わずか2.7%にすぎない。刑法犯のうちで,再入者より初入者に多いものは,業務上(重)過失致死傷のほか,強盗,横領,強姦,殺人,放火などである。業務上(重)過失致死傷は,45年に始めて窃盗を上回って首位となり,以後,首位の座を持続し,47年は,構成比において2位の窃盗を8.5%上回っている。特別法犯については,初入者では,道路交通法違反が最も多く,再入者では,覚せい剤取締法違反がわずかに道路交通法違反を上回って首位を占め,45年まで,長年にわたり首位を占めてきた売春防止法違反は,前年に引き続いて3位となっている。

II-53表 新受刑者中初入者と再入者の罪名比較(昭和47年)

 再入受刑者について,前刑出所後,本犯までの期間(再犯期間という。)を調べてみると,II-54表のとおりである。昭和47においては,再入受刑者の27.9%が前刑出所後6月未満で,45.4%が1年未満で再犯を犯しており,5年未満では88.0%の者が再犯を犯している。最近5年間では,6月未満の再犯者の割合は減少をみせている。

II-54表 新受刑者中再入受刑者の再犯期間別構成比の累積(昭和43年〜47年)

ケ 新受刑者の刑事処分歴及び保護処分歴

 新受刑者のうち,刑事処分歴のある者の割合は,II-55表のとおり,昭和47年においては66.0%であり,そのうち,実刑が大部分で,総数の51.8%を占め,次いで,単純な執行猶予(9.0%),保護観察付執行猶予(5.1%)となっている。逐年漸減してきた刑事処分歴のある者の割合は,47年は,前年に比べて1.1%増加している。

II-55表 新受刑者刑事処分歴別人員の比率(昭和43年〜47年)

 新受刑者のうち,保護処分歴のある者の割合は,II-56表に示すとおりであり,昭和47年においては25.6%で,逐年増加の傾向を示してきた構成比は,前年に若干減少した後,47年は再びわずかに増加している。保護処分歴のある者の大部分は,少年院送致歴を有する者で,総数の19.6%を占めている。

II-56表 新受刑者の保護処分歴別人員の比率(昭和43年〜47年)

 新受刑者のうち,初めて入所した者1万3,696人(総数の48.2%)について,保護処分歴及び執行猶予歴をみると,II-57表のとおりである。昭和47年において,保護処分歴のある者は,17.5%であるが,そのうち,少年院送致歴を有する者が大部分で,総数の11.9%を占めている。また,執行猶予歴のある者は,29.4%で,単純な執行猶予(総数の18.7%),保護観察付執行猶予(総数の10.6%)の順となっている。保護処分歴,執行猶予歴のある者の割合は,いずれも逐年わずかながら減少の傾向を示してきたが,47年は,執行猶予歴のある者の割合だけがわずかに増加している。

II-57表 初入受刑者の保護処分歴・執行猶予歴別人員と比率(昭和45年〜47年)

コ 新受刑者の教育程度

 新受刑者の学歴別構成比は,II-58表のとおりであるが,昭和47年の新受刑者中,中学卒業以上の者の占める比率は85.9%で,前年に比べて0.1%増加している。

II-58表 新受刑者の犯時学歴別人員の比率(昭和47年)

サ 新受刑者の入所前職業

 新受刑者の入所前(犯行時)職業をみると,II-59表に示すとおりで,昭和47年における有職者は,新受刑者総数の64.0%(男子64.7%,女子31.3%)である。

II-59表 新受刑者の犯時有職者職業別・男女別人員と比率(昭和47年)

 有職者について,その職業の内訳を男女別にみると,男子において最も多いものは,技能工・生産工程従事者34.5%で,以下,単純労働者の18.3%,販売従事者の14.2%,運輸・通信従事者の12.7%,サービス業従事者の7.7%の順となっている。女子においては,サービス業従事者の50.6%が最も多く,次いで,販売従事者の20.2%,技能工・生産工程従事者の8.4%,事務従事者の7.9%,単純労働者の6.7%の順となっている。

シ 新受刑者の人格特性

 昭和47年における新受刑者の知能指数(入所時調査)別構成比は,II-60表のとおりである。通常,知能が劣るといわれている知能指数79以下の者は,男子で33.9%(前年34.4%),女子で52.8%(前年52.2%)を占めている。また,精神診断の結果は,II-61表にみられるとおりで,精神薄弱,精神病質などの精神障害者は,男子では9.3%(前年10.3%),女子では12.9%(前年13.3%)となっている。

II-60表 新受刑者の知能指数段階別人員と比率(昭和47年)

II-61表 新受刑者の精神診断別人員と比率(昭和47年)