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 昭和48年版 犯罪白書 第2編/第1章/第3節/1 

1 公判の審理期間

 まず,公判手続による裁判の審理期間の推移を概観してみよう。II-29表[1][2]は,昭和42年から46年までの5年間について,起訴から通常第一審の終局までの審理期間を,年次ごとに百分率にして,地方裁判所と簡易裁判所とに分けて示したものである。これによると,地方裁判所の終局総人員のうち,6月以内に終局したものの比率は,42年の81.8%から逐年減少を続け,46年には終局総人員5万4,885人のうち73.8%となっている。また,3月以内に終局したものの比率も逐年低下してきており,46年には40.4%で,42年の割合が55.3%であったのと比較すると,約15%も減少している。一方,1年を超える審理期間を要したものが終局総人員に占める割合は,43年以降おおむね増加傾向にあり,46年では9.1%となっている。簡易裁判所では,46年の終局総人員2万4,047人のうち,3月以内に終局したものが72.4%,1年以内に終局したものは96.0%で,1年を超えたものは4.0%となっており,地方裁判所に比べると,審理期間はやや短かくなっている。簡易裁判所における審理期間は,ここ数年来さしたる変化は示していない。

II-29表 通常第一審事件(既済)の審理期間(昭和42年〜46年)

 次に,昭和42年から46年までの5年間について,起訴から控訴審の終局までの審理期間を,年次ごとに百分率にしてみるとII-30表のとおりである。これによると,6月以内に終局するものの終局総人員中に占める割合が逐年減少し,6月を超え1年以内に終局するもの,1年を超え3年以内に終局するものの比率がそれぞれ増加しており,公判の長期化の傾向がうかがわれる。

II-30表 控訴事件(既済)の起訴から控訴審終局までの審理期間(昭和42年〜46年)

 次に,昭和42年から46年までの5年間について,起訴から上告審の終局までの審理期間を,年次ごとに百分率にしてみるとII-31表のとおりである。46年の上告審の終局総人員3,085人のうち,終局までの審理期間が1年以内のものは,総数の26.1%,1年を超え2年以内のものは45.5%,2年を超え3年以内が13.7%であり,3年を超える審理期間を要したものが,14.6%となっているが,前年と比較すると,1年以内に終局したものの占める割合が増加していることが目立っている。

II-31表 上告事件(既済)の起訴から上告審終局までの審理期間(昭和42年〜46年)

 最後に,通常第一審の地方裁判所について,昭和42年から46年までの5年間にわたり,被告人1人当たりの平均審理期間,公判を開いた人員1人当たりの平均開廷回数,平均開廷間隔の推移をみると,II-32表のとおりである。これによると,地方裁判所における平均審理期間は,43年以降逐年伸長する傾向をみせているが,平均開廷回数はここ5年間に4.2回ないし4.4回とさしたる変化をみせていない(ただし,メーデー事件,大須事件を除く。)から,このような伸長の原因は,同表の平均開廷間隔の数値が示しているように,開廷間隔の伸長によるものとみてよいであろう。また,平均審理期間と平均開廷回数を,法定合議事件,裁定合議事件及び単独事件のそれぞれに分けてみると,法定合議事件と単独事件とでは,平均審理期間及び平均開廷回数ともに,それほど大きな差異はないが,裁定合議事件は,平均審理期間及び平均開廷回数が単独事件のおおむね4倍を超えており,裁判の長期化は,地方裁判所の裁定合議事件の審理に関して著しいといえよう。

II-32表 地方裁判所における平均審理期間,平均開廷回数及び平均開廷間隔(昭和42年〜46年)