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 昭和48年版 犯罪白書 第2編/第1章/第3節 

第3節 迅速な裁判

 憲法37条は,被告人に対し,迅速な裁判を受ける権利を保障し,刑事訴訟法1条はこれを受けて,適正迅速な裁判の実現を刑事手続の理念の一つとして掲げている。裁判の審理は,できるだけ慎重かつ丁重に行われることが望ましいことはいうまでもないが,その反面,裁判が遅延すると,その意義が失われるおそれがあり,迅速な裁判の実現は,刑事裁判に関係する者に課せられた重要な使命の一つである。我が国で,迅速裁判とか審理の促進とかが叫ばれてから既に久しく,刑事訴訟法規の改正をも含め,この目的に向かって関係者の努力が続けられてきているが,現状は,種々の障害のため,必ずしも満足すべき状態にあるとはいいがたい。
 ところで,昭和47年の末には,長期裁判として著名な4つの大きな事件,すなわち,メーデー事件,辰野事件,仁保事件及び高田事件が最終判決で落着したが,とりわけ,高田事件の最高裁判所判決は,被告人の迅速な裁判を受ける権利について画期的な判断を示したもので,改めて「迅速な裁判を受ける権利」についての国民的関心が高まり,長期裁判の問題が注目を集めるに至った。そこで,本年版白書においては,特にこの問題に焦点をあてて,現状を分析してみることとする。