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 昭和48年版 犯罪白書 第2編/第1章/第1節/4 

4 被疑事件の処理

(1) 概況

 昭和47年中に全国の検察庁で処理した被疑者の総数は406万3,261人である。このうち,検察庁間の移送を除いた298万6,350人について,処理区分別に百分率を算出して円グラフとしたのが,II-2図[1]であり,これと比較対照のため,10年前の37年について,同様の試みをしたのが同図[2]である。また,47年の処理状況を処理区分別に前年度と対比し,かつ,刑法犯,道交違反を除く特別法犯,道交違反の別に示すと,II-7表のとおりである。II-2図[1]により,47年中に処理された者の処理区分をみると,起訴された者は,総数の71.1%に当たるが,その内訳は,公判請求が総数の3.7%,略式命令請求が67.3%で,即決裁判請求は総数の0.1%にすぎない。不起訴処分は総数の14.4%,家庭裁判所送致は13.5%,中止処分は1.0%となっている。この割合を同図[2]により,昭和37年のそれと比較すると,略式命令請求の占める割合がやや増加し,即決裁判請求の激減が目につくが,全体としての起訴,不起訴,家庭裁判所送致の割合は,ほとんど変わっていない。

II-2図 処理区分別被疑者の百分比

II-7表 処理区分別被疑者数(昭和46年・47年)

 II-7表によると,起訴された者は,212万5,552人で,前年より21万7,608人増加し,起訴のうちに占める公判請求の割合は,刑法犯17.0%,道交違反を除く特別法犯14.4%,道交違反0.4%であり,不起訴処分を受けた者は,42万9,836人で,2万67人減少し,不起訴処分のうちに占める起訴猶予の割合は,刑法犯が79.5%,道交違反を除く特別法犯が87.9%,道交違反が90.3%となっている。

(2) 起訴及び起訴猶予

 昭和47年において,公判請求された者の総数は,11万1,745人,略式命令請求された者の総数は,200万9,818人,即決裁判請求された者は,3,989人であり,起訴猶予処分に付された被疑者の総数は,35万3,321人である。このうち,刑法犯の占める割合は,公判請求の85.1%,略式命令請求の23.1%,起訴猶予の69.9%となっており,公判請求及び起訴猶予の大きな部分は,刑法犯によって占められているが,略式命令請求では,その73.6%までが道交違反である。
 なお,昭和47年における不起訴人員のうち,罪とならず及び嫌疑なしを理由とするものの人員は,刑法犯では,罪とならずが546人,嫌疑なしが2,509人で,特別法犯では,罪とならずが261人,嫌疑なしが266人である。
 最近5年間における,起訴率(起訴・不起訴の総数で起訴の数を除したもの)と起訴猶予率(起訴・起訴猶予の総数で起訴猶予の数を除したもの)の推移を,全事件,刑法犯,業過を除く刑法犯,道交違反を除く特別法犯,道交違反に区分してみると,II-8表のとおりである。

II-8表 起訴率・起訴猶予率の推移(昭和43年〜47年)

 これによると,昭和47年における起訴率は,全事件で83.2%であり,刑法犯では64.3%,業過を除く刑法犯についてみると55.7%となっている。刑法犯全体の起訴率は,昭和43年以降,わずかずつ減少している。刑法犯から業務上過失致死傷のみを除いたものの起訴率は,43年の54.7%から逐年漸減してきたが,46年から増加に転じ,47年には55.7%となっている。起訴率の高い業務上過失致死傷の増加が,刑法犯全体について6割台の起訴率を維持させている原因であることが分かる。ちなみに,刑法犯の起訴・不起訴人員中に占める業務上過失致死傷の割合は,昭和43年で63.1%,47年には68.2%となっている。道交違反を除く特別法犯の起訴率は,43年から45年まで漸増してきたが,46年には前年よりやや減少した後,47年には再び増加して61.6%と,前年より5.4%の増加となっている。また,道交違反の起訴率は,最近5年間に,91.2%ないし95.5%の間を上下している。
 次に,昭和47年における刑法犯の主要罪名別に起訴率及び起訴猶予率を前年のものと対比してみると,II-9表のとおりである。これによると,起訴率の高い罪名は,賭博,富くじの83.2%,強盗致死傷等の78.4%,暴力行為等処罰に関する法律違反の75.2%,傷害致死の74.7%,傷害の73.8%,強盗の71.0%,公然わいせつ,わいせつ物頒布等の69.3%,業務上過失致死傷の68.3%となっている。一方,起訴猶予率をみると,公務執行妨害の76.5%が最も高く,以下,横領の64.2%,賍物関係の56.1%,窃盗の53.4%,文書偽造の53.3%,詐欺の48.3%,住居侵入の43.7%の順となっている。47年の起訴率及び起訴猶予率を前年と比べてみると,大きな変化を示しているのは,公務執行妨害と放火で,公務執行妨害では,起訴率が6.8%の減少,起訴猶予率が7.1%の増加となっており,放火では,起訴率が7.5%増加し,起訴猶予率は7.3%減少している。

II-9表 刑法犯主要罪名別起訴率・起訴猶予率(昭和46年・47年)

 次に,昭和47年の刑法犯主要罪名について,公判請求人員及び略式命令請求人員とそれぞれが起訴・不起訴人員中に占める比率とをみたのがII-10表である。これによると,公判請求人員の実数では,窃盗の3万8,767人が最も多く,次いで,業務上過失致死傷,詐欺,傷害,恐喝,強制わいせつ・同致死傷等,賭博,富くじの順となっており,公判請求の比率では,強盗致死傷,強盗強姦・同致死78.4%を最高にして,傷害致死,強盗,殺人,放火,恐喝,強制わいせつ・同致死傷等が5割以上の数値を示しているが,公判請求の実数が窃盗に次いで多い業務上過失致死傷は,公判請求の比率からみれば,2.5%にすぎない。また,略式命令請求についてみると,業務上過失致死傷が,実数及び比率ともに,39万104人,65.8%と最も多く,傷害の4万7,920人,64.4%がこれに次いでいる。

II-10表 刑法犯主要罪名別起訴区分(昭和47年)