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2 処遇の概要 (一) 教科指導 昭和四六年の少年院新収容者中,義務教育未修了者は,二九九人,新収容者総数中の九・一%にあたる(前掲III-80表参照)。
少年院においては,義務教育未修了の収容少年に対し,義務教育修了者の資格を得させることを目的として,初等少年院を中心に,教育関係法令に準拠した中学校課程の教科指導を実施している。少年院の長は,教科を修了した者に対して,学校教育法により設置された各学校の長が授与する卒業証書と同等の効力を有する修了証明書を発行できることとなっている。矯正統計年報により,教科指導の実施状況をみると,義務教育未修了者で教科指導を受けた者の修了証明書授与率は逐年高まり,昭和四六年においては約九〇%となっている。 なお,義務教育修了者に対しても,中学校課程の教科指導により,学力の補足や高等学校進学予定者への補習がはかられているほか,高等学校通信教育も行なわれている。 (二) 職業補導 少年院に新たに収容する少年のうち無職の者は例年約半数を占めている(昭和四六年の新収容者のうち無職の者はその総数の五一・二%,一,六八五人である。前掲III-81表参照)。また,収容少年の職業歴をみると,転職を繰り返している者や職業生活に安定できるような知識・技能に欠ける者が多い。このような収容者に対して,労働を重んずる態度と規則正しい勤労の習慣を養わせ,職業生活に必要な知識・技能を授けることを目的として,職業補導が行なわれている。
昭和四六年一二月末現在実施しているおもな職業補導の種目別人員は,III-85表のとおりであり,在院者総数(四,〇四八人)の八二%にあたる,三,三二六人が職業補導を受けている。補導人員の多い種目は,農業関係(農耕,園芸,畜産),木材加工関係(木工),金属加工関係(機械,板金,溶接),サービス関係(理・美容,家事サービス,事務,和文タイプ)等があり,その実施施設数も多い。また,このほか,自動車,電気工事,簿記,英語,ラジオなどの講座について,通信教育が実施されており,四五年四月から四六年三月までの受講者総数は,公費・私費あわせて一,七九四人となっている。 III-85表 職業補導種目別実施状況(昭和46年12月31日現在) 中等少年院および特別少年院では,一般に職業補導を重視しているが,一定の技能習得能力があり,技能の習得によって更生する可能性が高いとみられる者を対象とし,職業訓練法にのっとって,一般の公共職業訓練所と同内容の職業訓練が行なわれ,訓練を修了した者に対しては,労働省職業訓練局長から職業訓練履修の証明書が交付されている。昭和四六年における証明書の取得者数はIII-86表のとおりである。また,このほか,電気工事士,自動車整備士,理容師,美容師を養成する学校を設けている施設が一二庁あり,それぞれ担当大臣の指定を受けて,指導が行なわれている。四六年においては,自動車整備士一八人,電工三七人,理・美容師三七人,計九二人が所定の課程を修了し卒業している。III-86表 職業訓練履修証明書取得状況(昭和46年) 少年院では,このように,各種の資格・免許の取得の機会を少年に与えているが,昭和四六年におけるその取得状況はIII-87表のとおりで,各種の資格・免許の取得者の総数は,三,六八八人となっている。取得した種目は一九種目に及んでいるが,珠算,溶接工,自動車運転がことに多い。III-87表 資格・免許取得状況(昭和46年) (三) 生活指導 少年院における生活指導の目標は,少年の反社会的な考え方や行動様式などを除去して健全な社会性を発達せしめることにある。これは,少年院における矯正教育に対する最も基本的な要請であるといえよう。このため,在院生活の経過に応じた指導としては,入院当初には,日常生活における基本的な行動様式を身につけさせることを主眼として行ない,期間の経過にしたがって漸次必要な社会的生活訓練を与え,最後に出院にあたっては出院後の生活設計をたてさせるなど,計画的なプログラムのもとにこれを行なっている。
具体的な指導内容としては,道徳教育のほか,学級活動,社会教育講座,教育相談,クラブ活動の指導,篤志面接委員による面接,個別・集団カウンセリングやその他の心理療法などであるが,その他余暇時間におけるレクリエーション場面など収容生活のあらゆる場面で個別指導が行なわれている。また,学寮生活集団における公式的な係組織の編成や,夜間における討議集会など,集団活動を通じての生活指導は,最近とくに重視され,活発に行なわれている。 法務省矯正局の調査によれば,昭和四六年中のクラブ活動においては,所属者総数六,六四七人,クラブ数五一九,クラブ活動の実施回数一九,五五六回となっている。実施回数の最も多いのは,美術・工芸,音楽,書道,文芸など文化系統のクラブ活動である。ついで運動系統,職業技能系統のクラブ活動も活発に行なわれている。 昭和四六年中の篤志面接委員の面接指導は,法務省矯正局の調査によれば,八,七八〇回行なわれている。その内容は,精神的はんもん,職業相談,家庭相談,教養相談などとなっている。 (四) 医療衛生と給養 矯正統計年報によれば,昭和四六年中の出院者(四,〇三三人)のうち在院中に傷病によって休養したことのある者(教育訓練などの日課を停止し,病室に収容して医療を施す者を休養患者という。)は,一,三六五人である。これによると,在院中,約三人に一人は傷病によって休養したことがあることになる。休養患者一人当たりの休養日数は,三四日となっているが,休養患者の中には,医療少年院に収容され,比較的長期間医療をうけた者が含まれている。休養患者の病名では,非伝染性の呼吸器系疾患(その半数以上は,急性鼻咽頭炎―かぜひき―である。)と消化器系疾患が最も多く,前者にあっては,休養患者総数の二七・九%,後者にあっては,一四・七%を占めている。
矯正施設では収容者の健康管理には細心の注意が払われ,なかでも伝染病の予防については,上下水道や,し尿処理設備の改善など,格別の配慮がなされている。 収容者の日常生活に必要な衣類,寝具,学用品などは,貸与または給与することになっている。ただし,紀律や衛生に害がないかぎり,自弁品の使用が許される場合がある。 食糧の給与は,一人一日三,〇〇〇カロリーであって,昭和四六年度の一人一日当たりの主食費は,六六・九五円,副食費は,五〇・六一円である。その他,心情安定食四・四四円のほか,年一回の誕生日菜や年一一回の祝祭日菜(それぞれ二五円)が認められ,国民一般の慣習に近づけるよう努力がつづけられている。 |