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 昭和47年版 犯罪白書 第二編/第三章/三/2 

2 更生保護会

 昭和四六年一二月末日現在において,宿泊保護施設を備え,直接犯罪者に対する保護を行なう更生保護会は,全国に一一五団体あり,その内訳および収容定員は,II-95表のとおりである。同表によれば,一一五の施設のうち,一〇一は男子のみを対象とし,一四は,女子のみまたは男子と女子とを対象とするものである。対象の年齢層別では,成人を対象とするもの三七,青少年を対象とするもの一三,すべての年齢層を対象とするもの六五施設となっている。収容定員の総数は,三,三四一人である。

II-95表 更生保護会の種類別保護施設と収容定員(昭和46年12月31日現在)

 昭和四七年二月末日現在の概況に関する法務省保護局の調査によると,同日の被保護者総数は一,五三九人で,これは収容定員の四六%程度にすぎない。一,五三九人の内訳をみると,委託による保護では更生(緊急)保護五四一人(三五・二%),救(援)護五五〇人(三五・七%),家庭裁判所の委託八五人(五・五%)があり,残りの三六三人(二三・六%)は,委託によらないで,更生保護会が独自に保護しているいわゆる任意保護の対象者であった。調査日までの更生保護会在住期間をみると,三月以内のものが八六四人と,全体の五六・二%を占めている反面,一年をこえて居住している者も二六二人(一七・一%)を数える。入居の理由では,「身寄りに迷惑をかけたくない」二八・〇%,「家族との折合いが悪い」二七・七%,「身寄りがない」二七・二%のほか,交友,住居,近隣感情等のよくないことを理由とする者七・三%がある。入居してからはじめて就労するまでの期間をみると,五日以内に大多数の者(七八・〇%)が就労しており,一月以上かかった者は,一・二%にすぎない。調査時の生活態度では,良好三八・五%,普通五七・一%,不良三・三%,その他一・一%となっている。
 昭和四五年四月一日から四六年三月末日までの被保護者に関する法務省保護局の調査によると,同期間に更生保護会を退会した者七,七八六人の退会状況の内訳は,「円満退会」が六九・三%で最も多いが,「無断退会」が二〇・六%,再犯等の「事故による退会」が四・〇%,「勧告による退会」が三・一%を占めている。次に退会先についてみると,「就業先に住込み」が二八・五%,「親族,縁故者のもとに帰住」が二五・六%,「下宿・借家等へ転出」が一三・七%で,大部分の者は,自立への足がかりを得て退会しているといえるが,反面,「社会福祉施設に転出」三・三%,「不明」二〇・七%等もみられる。
 昭和四五年矯正統計年報によれば,同年中の刑務所出所総人員二八,八七〇人中,釈放時,更生保護会を帰住地とした者は六,〇一五人で,二〇・八%を占め,これを二度以上刑務所に入ったことのある者に限ると,一五,四二二人中四,八九六人で,出所者の三一・七%までが更生保護会を帰住地としている。また,昭和四六年に法務省保護局が行なった更生保護会被保護者の実態調査では,更生保護会を帰住地とする仮出獄者と一般仮出獄者を対比しているが,その結果,前者に悪条件をもつ者が多いことが明らかになっている。更生保護会帰住仮出獄者中,悪条件をもつ者の比率を,一般仮出獄者中同じ悪条件をもつ者の比率と対比して,顕著な差をもつものを以下に掲げると(かっこ内は一般仮出獄者),知能指数六九以下二九・四%(一八・六%),配偶者離死別二九・三%(一二・五%),刑務所入所度数三度以上五八・八%(二五・一%),単純労働者五六・九%(二四・三%)等となっている。
 以上を要約すれば,更生保護会の被保護者は,親族,縁故者からも見放され,適当な帰住先のない者で,経歴,資質,環境等に問題があって,再犯の危険性が強い場合が多い。このような者を収容保護し,その社会復帰を援助する更生保護会の役割は重大であるといえよう。
 近年においては,更生保護会被保護者の数が減少し,収容定員に対する収容者数の率が五割を下回っている。このことは,かねがね経営が容易でなかった更生保護会の合理的な運営をいっそう困難ならしめている。犯罪者の社会復帰と再犯防止を促進するためには,更生保護の重要な一翼を担う更生保護会の処遇機能が充実されることが期待され,そのためには,まずその経済基盤の強化と有能な職員の確保と施設の整備が望まれるところである。