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3 保護観察中の移動と所在不明 保護観察の対象者が他管内に移動したときは,保護観察事件は移送されることになるが,最近五年間の保護観察事件の移送状況はII-84表のとおりである。これによると,昭和四六年中の移送受理人員の総数は一三,一七二人で,新受および移送による受理人員のうち移送受理人員の占める割合(移送受理率)は,四二年の一八・三%から四六年の二〇・〇%へと逐年上昇し,近年の人口移動の激化が保護観察対象者の間においても例外でないことを示している。移送受理は,保護観察期間の一般に短い仮出獄者の場合を除き,保護観察処分少年,少年院仮退院者,保護観察付執行猶予者ともおおむね受理四人につき,一人の割合になっている。
II-84表 保護観察事件の移送受理率(昭和42〜46年) 保護観察対象者の移動は,その間保護観察に空白を生じさせ,また,とくに無断で移動する場合は,あとあと所在不明になりやすく再犯のおそれが高いと考えられる。II-85表によれば,昭和四六年末において所在不明の状態にある保護観察対象者の総数は六,四七五人で,年末現在保護観察人員の七・九%にあたり,前年に比べ,実数,比率ともいっそう低下してきている。四六年の所在不明率の低下は,すべての種別の保護観察事件に共通にみられる。 II-85表 所在不明状況累年比較(昭和42〜46年) 昭和四六年の仮出獄者の所在不明率は,二三・二%で,他の種別の率よりも著しく高いが,これは,次の理由による。すなわち仮出獄者の場合には,本人が所在不明になると,保護観察所長の申請に基づいて,地方更生保護委員会が保護観察停止の決定を行ない,これによってその者の刑期の進行は停止し,本人の所在が判明して停止が解かれるか,あるいは刑の時効が完成するまでの間,その状態が継続するので,仮出獄者の所在不明数の中にはこのような事情による累積数が含まれるためである。なお,保護統計年報資料によると,昭和四六年中に保護観察停止申請のあった仮出獄者の数は一,〇〇八人であり,また,同年末現在保護観察停止中の者は一,七五四人で,同年末現在の仮出獄者数の二三・〇%にあたる。移動対象者については,転居に際しての許可願出等の手続を厳格に励行させることはもちろん,所在調査の迅速,的確化および移送庁・受理庁間の連絡の緊密化を図るなど,保護観察からの離脱を防ぐための十分な態勢がさらに望まれるところである。 |