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 昭和47年版 犯罪白書 第二編/第一章/二/5 

5 裁判の執行

(一) 死刑の執行

 昭和二一年以降四六年までの二六年間に死刑を執行された人員は,五一〇人であるが,最近五年間における死刑執行人員は,八四人となっている。この八四人の罪名をみると,強盗殺人が六四人,殺人が一九人,放火が一人である。殺人のうちの一六人は,それ以外の犯罪,たとえば強姦致死,同致傷,放火,傷害致死,営利誘拐,死体損壊,同遺棄・爆発物取締罰則違反などの犯罪を犯したものであり,放火の一人は,保険金詐取の目的による放火によって,焼死八名,重軽傷六名の被害を発生させたものである(矯正統計年報,同年報資料による。)。

(二) 自由刑の執行

 昭和四二年から四六年までの五年間における自由刑の執行指揮の状況をみると,II-28表のとおりである。懲役刑の執行指揮人員は,四二年以降四五年まで漸減してきたが,四六年には前年よりやや増加して二八,六〇六人となっている。これに対して,禁錮刑は,年を追って増加している。これは,自動車事故による業務上過失致死傷事件の増加に伴うものである。懲役刑が四六年に前年と比べて若干増加したのは,四三年の刑法の一部改正により,業務上過失致死傷および重過失致死傷の罪の法定刑に,懲役刑が加えられたため,同罪により懲役刑に処せられるものが増加してきたことによるものである。

II-28表 自由刑の執行指揮人員(昭和42〜46年)

(三) 財産刑の執行

 最近三年間の罰金および科料の調定件数と調定金額(本来,調定とは,歳入徴収官が徴収すべき金額を調査決定することをいうのであるが,検察庁の事務のうえでは,徴収金原票を作成し,これに登載された徴収すべき金額を,検察官が確認して執行指揮印を押印するなどの手続をとることを,調定と呼んでいる。)をみたのが,II-29表[1][2]である。同表によると,昭和四六年度における罰金の調定金額は二七〇億余円,科料は二八三万余円で,前年に比べて,罰金は約二四億円増加し,科料は約一八万円減少している。

II-29表 調定件数および調定金額(昭和44〜46年度)

 次に,昭和四六年度における罰金および科料の徴収状況についてみると,II-30表のとおりである。これによると,現金等により収納されたものと労役場留置処分とを合わせた徴収率は,件数において,罰金が九七・三%,科料が九六・七%となっている。

II-30表 罰金および科料の徴収状況(昭和46年度)