昭和四六年における刑法犯について，主要罪名別に，その発生と検挙の状況をみたのがI-10表であり，発生件数と検挙人員の罪名別比率を円グラフにしたのがI-2図である。四六年の刑法犯発生件数一，八七五，三八三件のうち，最も多いのは，窃盗で，全体の五四・七％(昭和四五年は五三・八％，以下同じ。)を占め，これに次ぐのが業務上(重)過失致死傷の三三・八％(三三・九％)である。続いて，詐欺の二・七％(三・〇％)，傷害・同致死の二・五％(二・六％)，暴行の一・五％(一・七％)，恐喝の〇・九％(一・〇％)となっており，殺人，強盗，強姦，放火などの凶悪な犯罪の比率はきわめて少ない。これを四五年の数字と比較すると，放火がわずかに増加したほかは，いずれも前年より減少している。

I-10表　主要罪名別刑法犯の発生・検挙件数と検挙人員(昭和45,46年)

I-2図　主要罪名別刑法犯発生件数・検挙人員の百分比(昭和46年)

　次に，同表によって検挙率をみると，刑法犯全体では前年とまったく同率の七〇・五％となっている。罪名別にみると業務上(重)過失致死傷のほぼ一〇〇％をはじめ，殺人，横領，暴行，強姦・同致死傷，傷害・同致死の検挙率が，いずれも九〇％以上となっている。発生件数の過半数を占める窃盗の検挙率は，四八・二％と低いが，前年の四七・五％を上回っている。
　検挙人員の罪名別比率をみると，昭和四六年の刑法犯検挙人員一，〇二六，二九九人のうち，最も多いのは，業務上(重)過失致死傷で，総数の六五・〇％を占め，これに次ぐ窃盗の一六・五％をはるかに上回り，次いで傷害・同致死の五・五％，暴行の三・四％，詐欺の一・五％，恐喝の一・四％の順となっている。以前は，刑法犯の検挙人員中最も多いのは窃盗であり，毎年総数の三〇％以上を占めていたのであるが，三九年以降は，業務上(重)過失致死傷が窃盗をしのぐこととなり，四二年は総数の五〇・一％，四三年は五七・七％，四四年は六二・五％，四五年は六四・八％，四六年は六五・〇％と逐年その比率は上昇をみせている。以下，項を改めて，財産犯罪，暴力犯罪，性犯罪，過失犯罪およびその他の刑決犯の別に，最近の状況を述べることとする。