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 昭和46年版 犯罪白書 第三編/第一章/六/2 

2 処遇の概要

 少年受刑者の処遇は,監獄法令上,成人受刑者の処遇一般に対する特例として規定せられており,一般処遇に比べて,より教育的,保護的であるのを特色とし,処遇の中心となるものは,少年の更生のため必要な生活指導,職業訓練および教科教育などである。

(一) 生活指導

 少年受刑者は,成人受刑者に比べ,教育の可能性が大きい反面,好ましくない刺激に対する被影響性も大であり,また青少年期特有の欲求不満や情緒不安定を生じやすいことから,生活指導には,とくに留意されている。
 まず入所時には,オリエンテーションのための教育を長期間行なうことによって,刑務所内での生活に対する不安感の除去に努めるとともに,情緒の安定に意を用いている。また規律的な生活訓練を厳格に行なうとともに,カウンセリング活動や篤志面接委員による面接指導も活発に行なわれている。なお,体育祭,運動会,集団散歩などの行事や,余暇時間を利用した各種クラブ活動などが計画的に実施されている。
 さらに,釈放前には,社会適応のための生活調整がなされるが,その中には,仮釈放時教育の一環として,施錠のない居室で,開放的な処遇を実施している施設もある。

(二) 職業訓練および刑務作業

 少年刑務所の受刑者には,技能をもたない者が多いので,受刑者職業訓練規則による職業訓練が積極的に行なわれており,職業訓練には,なるべく資格または免許を取得できる種目が選定されている。なお,奈良少年刑務所および函館少年刑務所は,総合職業訓練所に指定され,主として,木工,板金,溶接,理容,クリーニング,船舶職員,無線等の種目について,訓練が行なわれている。両施設で職業訓練を受けた者で,木工,建築大工,左官,機械,板金,洋服,製くつ,活版印刷の種目を修了した者については,労働省職業訓練局長から,職業訓練履修証明書が交付されており,少年受刑者の更生に役だっている。少年刑務所において職業訓練を受けている訓練生の人員と種目は,III-91表のとおりである。

III-91表 少年刑務所における職業訓練種目と人員(昭和46年3月1日現在)

 次に,所内で職業訓練を修了した者は,職業訓練法,理容師法その他法令に基づいた公式の技能検定をはじめ各種の試験を受けることができ,その合格者は,公認された職業上の資格,免許を取得することができる。現在,少年刑務所では,できるだけ,この資格や免許をうることができるように配慮している。昭和四五年度中には,III-92表に示すとおり,九五五人が,自動車整備士などの資格または免許を取得している。

III-92表 少年刑務所における各種資格および免許取得人員(昭和45年度)

 職業訓練を受けない者には,一般の刑務作業を行なわせるが,この場合でも,できる限り,需要の多い有用作業が選定され,かつ,受刑者職業訓練規則の趣旨に基づいた指導が行なわれている。
 昭和四六年三月末日現在,刑務作業に就業している受刑者を業種別にみると,III-93表に示すとおりで,金属,木工,印刷作業などに就業している者が多い。

III-93表 少年刑務所における刑務作業別人員(昭和46年3月31日現在)

(三) 教科教育

 教科教育は,義務教育未修了者,その他学力の低い者に対して重点的に実施されている。義務教育未修了者に対して所定の教科教育を修了させた場合,少年院のように,修了証明書を発行できる制度はないが,松本少年刑務所では,昭和三〇年四月以降,刑務所内に松本市立中学校の分校を設け,所定の課程の修了者には,本校の校長から証明書が交付されるよう配慮されていて,昭和四六年三月末日までに合計三二八人が修了証明書の交付を受けている。
 なお,公費または私費による通信教育が,昭和二五年以降,活用されているが,昭和四五年中には,III-94表のとおり,公費生八八人,私費生九〇人が通信教育を終了し,所定の資格を取得している。講座の種目については,簿記,ペン習字,自動車技術,英語等が多くなっている。

III-94表 通信教育終了による資格取得人員(昭和45年度)