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 昭和46年版 犯罪白書 第一編/第二章/一/4 

4 性犯罪

 I-22表および23表は,性犯罪の発生件数と検挙人員を示している。強姦(同致死傷を含む。)についてみると,発生件数,検挙人員ともに,最近は,逐年,減少する傾向を示している。強制わいせつ(同致死傷を含む。)は,発生件数において,昭和四四年までやや増加がみられたが,四五年は前年より減少し,検挙人員においては,昭和四三年以降わずかずつ減少している。このように,強姦,強制わいせつの発生件数は,最近において減少の傾向にあるが,ここで注意を要するのは暗数である。けだし,これらの犯罪にあっては,被害者である女性が,しゅう恥心ないし加害者と顔見知りである等の事情から,届け出をためらうため,とくに高い暗数があるものと考えられ,統計面における発生件数の減少が,ただちに,実際に発生した犯罪数の減少を物語るものではないからである。一方,公然わいせつとわいせつ文書・図画の頒布・販売等については,昭和四五年には,最近における性解放の風潮によってか,発生件数,検挙人員ともに,かなりの増加をみており,とくに発生件数においては,過去五年間の最高である。

I-22表 性犯罪の発生件数(昭和35,41〜45年)

I-23表 性犯罪検挙人員(昭和35,41〜45年)

 次に,検察統計により,昭和三五年および四一年以降の性犯罪の新規受理人員をみたのが,I-24表である。これによると,性犯罪の合計数は,昭和四一年以降,逐年わずかずつ減少の傾向にあることが認められるが,昭和四五年には,合計数,強姦および強制わいせつが前年より減少しているにかかわらず,公然わいせつ,わいせつ文書頒布等が前年より増加し,しかも一〇年前の昭和三五年と比較すると,増加に著しいものがあることには,注意を要するところである。

I-24表 性犯罪罪名別検察庁新規受理人員(昭和35,41〜45年)

 こころみに,都市における「性」の一端を知るため,マンモス都市の代表である東京都内で行なわれた最近五年間の性関係犯罪の発生件数について,警視庁の調査結果をみると,I-25表のとおりである(ここでいう性関係犯罪とは,婦女暴行《強姦》,痴漢《婦女切り,婦女汚し,強制わいせつ,少女わいせつ等》,変態《色情盗,婦女追随,のぞき,陰部露出等》で,以上に述べた性犯罪とは,若干範囲を異にしている。)。東京都内の性関係犯罪の合計は昭和四二年に相当数増加し,翌四三年からは減少の傾向をたどっている。ただし,昭和四五年と四四年を比べると,痴漢,変態は全体の傾向に沿っていずれも減少しているにもかかわらず,婦女暴行だけが若干増加しているのは留意に値しよう。

I-25表 東京都内性関係犯罪態様別発生件数(昭和41〜45年)

 次に,婦女暴行,痴漢のそれぞれの犯行の態様をみると,犯行場所にあっては,婦女暴行は,アパートが最も多く(三五%),次が,住宅,旅館・ホテルである。痴漢は,路上が最も多く(四一%),アパート,電車等内,公園・空地がこれに続いている。被害者の年齢をみると,婦女暴行にあっては,二〇歳から二九歳までが半ば以上を占め(五二%),次が,一三歳から一九歳まで,三〇歳から三九歳までである。痴漢にあっても,二〇歳から二九歳までが多いが(四一%),次が一二歳以下,一三歳から一九歳までとなっており,しかも一二歳以下の占める割合が二四%と比較的多いことが目だっている。被害者の職業をみると,婦女暴行では,ホステス,ウェイトレスなどのサービス業従業員(二五%),学生・生徒,無職,会社員の順であり,痴漢にあっては,学生・生徒(三三%),会社員,サービス業従業員の順であり,被害者中,学生・生徒の占める割合が比較的多くなっている。被害の原因は,婦女暴行にあっては,「顔見知りなどのため油断して」が最も多く(三五%),次が「甘言に誘われて」,「戸締り忘れ」となり,痴漢にあっては,「暗い夜道のひとり歩き」(三五%),「甘言に誘われて」,「乗物や映画館などの混雑の中」の順となっている。最後に,犯行の動機についてみると,婦女暴行,痴漢の合計につき,「性的欲望にかられて」が半ばを占め(五〇%),次が,「酔っぱらって」,「でき心」の順となっている。