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 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第二章/三/2 

2 家庭裁判所の審判

 学生らによる集団暴力事件で検挙された少年に対する家庭裁判所の処理状況については,少年の公安事件に対する家庭裁判所の処理状況をみたIII-124表が参考となろう。同表は,昭和四二年一〇月一日から同四四年一二月三一日までの間に,全国の家庭裁判所が受理した四,八〇八人についての処理状況をみたものであるが,終局処理総数三,〇五三人のうち,刑事処分相当として検察官に送致されたものは,総数の五・八%にあたる一七七人(このほか,二〇歳以上であることが判明したため,少年法第一九条第二項によって検察官送致されたもの五七人),少年院に送致されたものは,〇・一%の四人,保護観察に付された者は,四・五%の一三六人となっており,不処分は,三六・七%にあたる一,一二〇人,審判不開始は,五一・一%にあたる一,五五九人となっている。この処理状況を,昭和四二年一〇月一日から同四三年一一月三〇日まで(以下前期という。)と同年一二月一日から同四四年一二月末日まで(以下後期という。)の二つの期間に分けてみたのが,III-125表である。これによると,後期の一年一か月間における終局処理人員は,前期の一年一か月間の二倍以上となっているが,刑事処分を相当とする検察官送致の割合は,前期の二・一%に対して,後期の七・五%と増加し,保護観察に付せられた者の割合も,〇・八%から六・一%に,また,不処分も二三・六%から四二・六%と増加しており,一方,審判不開始は,前期に七一・八%であったものが,後期には四一・六%と,その割合を減じている。なお,この家庭裁判所の受理人員のうち,検察官が送致した四,七九二人について,犯罪行為当時の年齢区分をみたのが,III-126表である。同表によると,総数の六五・七%にあたる三,一四七人が一九歳,二二・五%にあたる一,〇七七人が一八歳であって,一八,九歳の年齢層が九割近くを占めている。また,右の四,七九二人のうち,犯行当時,大学生,高校生であったものの占める割合をみると,III-127表のとおりであるが,大学生は,総数の六七・六%(三,二三八人),高校生は,一四・六%(六九九人)を占めている。

III-124表 少年の公安事件に対する家庭裁判所の処理状況(昭和42年10月1日〜昭和44年12月31日)

III-125表 少年の公安事件に対する家庭裁判所の処理状況(昭和42年10月1日〜昭和44年12月31日)

III-126表 行為時年齢別人員(昭和42年10月1日〜昭和44年12月31日)

III-127表 大学・高校の在学有無別人員(昭和42年10月1日〜昭和44年12月31日)

 ところで,この種事件を犯した少年のうち,その資質を鑑別するため,少年鑑別所に収容された者の数も大幅に増加し,昭和四三年の鑑別受付人員が五二人であったのに対し,四四年は,その一五倍にあたる七八〇人となっている。そこで,この合計八三二人のうち,昭和四四年末までに鑑別を終了した七八〇人(昭和四三年中五〇人,同四四年中七三〇人)について,その特性等を調査した結果をみることとしたい。なお,この鑑別終了人員のうち,九割近くが一八,九歳の年長少年であり,また,約六割が大学在学中,約二割が高校生という構成となっている。
 そこで,精神診断の結果が得られた六一九人,知能指数の判明した七〇三人について,昭和四四年中の全国の少年鑑別所における家庭裁判所関係の鑑別結果と対比して示したのが,III-128表[1]および[2]である。これによると,一般の非行少年に比べて,精神状況が正常で,知能指数の高い者の割合が圧倒的に高いが,約六割が大学生という対象者の構成を考えれば,当然の結果であろう。しかし,この中には,わずかではあるが,知能指数の著しく低い者や,精神病質(疑いを含む。)者なども含まれている。

III-128表 集団事件収容者の人格特性

 次に,これらの対象者に対して行なった法務省式人格目録検査の結果により,その性格特性をみると,多岐多様であって,とくに一定の傾向といったものは見出せないが,一般非行少年と比べると,「特性があまり顕著でなく,概してノーマルであるが,無気力,気の弱さ,消極性といった傾向」,「自己を守るために,自分の弱点をかくし,自分をよく見せようとする自己防衛的傾向」,「情緒的には安定し,神経質傾向があっても表面に現われず,外向的,社交的であるが,内面的成熟は不充分で,自分をよく見せようとする煩向」などの特性群が,比較的多くなっている。