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 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第一章/七/2 

2 少年の保護観察

 保護観察一般については,すでに,第二編第三章において述べたので,ここでは,保護視察処分少年および少年院仮退院者について,若干の事項を付加するにとどめる。

(一) 概況

(1) 保護観察処分少年

 昭和四四年中に新たに受理した保護観察処分少年の総数は,二五,九九九人であり,前年に比べ,二,五五〇人の減少となっている。同年末現在の保護観察処分少年は,五五,二一五人で,保護観察対象者総数(九二,三六八人)の五九・七%を占めている。
 昭和四四年の保護観察処分少年の新受人員を,年齢層別および性別にみると,III-107表のとおりである。男子では,年長少年(一八歳以上)が六五・四%と,きわめて高い割合を占めているが,女子では,中間少年(一六ないし一七歳)と年長少年とが,いずれも四〇%台で,ほぼ同じ割合となっている。保護観察処分少年の新受人員について最近五年間の年齢層別の推移を示すと,III-8図のとおり,年長少年の増加,中間少年,年少少年(一五歳以下)の減少の傾向が顕著である。

III-107表 保護観察処分少年の年齢層別性別人員(昭和44年)

III-8図 保護観察処分少年の年齢層別構成の推移(昭和40〜44年)

 次に,昭和四四年の保護観察処分少年の新受人員を行為別にみると,III-108表のとおりである。これによると,総数の三〇・四%を占める道交違反が,窃盗(二八・一%)を押えて,はじめて第一位となり,この二つに次いで,業務上過失致死傷(一五・八%)が続いている。その他の罪名にあたる者ないし虞犯は,いずれも一〇%に満たない。

III-108表 保護観察処分少年(新受)の行為別人員(昭和44年)

(2) 少年院仮退院者

 昭和四四年中に新たに受理した少年院仮退院者の数は,三,八九五人であり,前年と比べ,一,一二一人の減少となっている。同年末現在の少年院仮退院者は五,七八二人で,保護観察対象者総数の六・二%を占めている。
 昭和四四年の少年院仮退院者の新受人員を,年齢層別および性別にみると,III-109表のとおりで,男女を問わず年長少年の占める割合が最も高くなっており,また,保護観察処分少年の場合と同じく,III-9図の示すとおり,最近数年間に,年長少年が増加し,中間少年および年少少年の減少する傾向がみられる。

III-109表 少年院仮退院者の年齢層別性別人員(昭和44年)

III-9図 少年院仮退院者の年齢層別構成の推移(昭和40〜44年)

 昭和四四年の少年院仮退院者の新受人員を,行為別にみると,III-110表に示すとおり,窃盗が五五・四%と過半数を占め,当然のことであるが,少年院収容者のそれと傾向を同じくしている。

III-110表 少年院仮退院者(新受)の行為別人員(昭和44年)

(二) 保護観察対象少年の資質等

 昭和四四年中に保護観察を終了した保護観察処分少年(三一,二〇六人)と,少年院仮退院者(五,八八六人)について,その資質および環境等の比較を試みたのが,III-111表の[1]ないし[5]である。なお,同表には,昭和四〇年中に保護観察を終了した少年の数字も,参考までに掲げることとした。

III-111表 保護観察処分少年と少年院仮退院者との資質・環境等の比較(昭和40,44年)

 まず,同表[1]により,保護観察の終了までに,少年鑑別所の鑑別または精神医の診断等が行なわれたものについて,その精神状況をみると,保護観察処分少年に,「正常」または「準正常」の割合が多く,少年院仮退院者に,「精神薄弱」,「精神病質」等の精神障害者の割合の多いことが認められる。
 次に,保護観察回数を,同表[2]によって比較すると,保護観察処分少年にあっては,はじめて保護観察を受けた者が,九四・〇%とほとんど全数を占めているのに対し,少年院仮退院者の場合は,その割合が半数に満たず,五〇・四%が二回目またはそれ以上となっている。
 同表[3]は,教育程度を比較したものであるが,保護観察処分少年の方に,高い教育を受けている者の割合が多く,少年院仮退院者にあっては,義務教育未終了者が一割をこえていることが注目される
 実父母の有無と居住状況について,同表[4]および[5]によって比較すると,保護観察処分少年は,少年院仮退院者に比較して,実父母のある者の割合がかなり高く,また,家族・親族と同居している者の割合もやや高い。
 このようにみてくると,少年院仮退院者は,保護観察処分少年に比べ,その資質や環境等の多くの面において,問題のある者の多いことが明らかである。III-112表は,昭和四〇年から四四年までの間に,保護観察中非行を犯し,刑事処分または保護処分を受けた者の割合を,処分を受けた年次にしたがって,保護観察開始の当年から第五年目までに分けて,少年院仮退院者と保護観察処分少年とを比較したものであるが,これによると,保護観察処分少年にあっては,第五年目までに一五・五%が再犯に及んで処分を受けているのに対し,少年院仮退院者においては,それが三〇・三%と,二倍に近い割合となって,その処遇に困難な点の多いことを示している。

III-112表 少年院仮退院者,および保護観察処分少年の保護観察期間中の再犯処分比較(昭和40〜44年)