前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第一章/七/1 

七 少年の仮釈放および保護観察

1 少年の仮釈放

 ここでは,少年院からの仮退院と不定期刑受刑者の仮出獄について述べることにする。

(一) 少年院からの仮退院

 少年院からの仮退院は,原則として,少年院で処遇の最高段階に達した者について,本人の性格,行状,態度,少年院における成績,帰住後の環境等から判断して,保護観察に付することにより,その更生がおおむね期待できるようになったとき,地方更生保護委員会がこれを許すことになっている。ただし,処遇の最高段階に達しない者であっても,更生に努力し,本人の向上しうる段階の限度に達したものと認められ,かつ,保護観察に付することにより,本人の更生がおおむね期待できるときにも,仮退院を許すことができることとされている。
 仮退院申請の受理,その許否決定の状況はさきにみたとおりであるが(一七一ページ),昭和四四年の申請受理人員は四,〇一二人で,前年に比べ一,〇三四人の減少となっている。
 次に,少年院からの出院状況を,最近五年間について,退院・仮退院別にみたのがIII-102表であるが,仮退院率は,起伏はありながらも減少の傾向にあり,昭和四四年には,七一・四%の者が仮退院で出院している。

III-102表 少年院からの仮退院・退院別人員(昭和40〜44年)

 仮退院の期間は,原則として二〇歳に達するまでであるが,二六歳をこえない範囲で例外があり,その間,保護観察が行なわれる。昭和四四年に,保護観察の対象となった少年院仮退院者の仮退院期間をみると,III-103表のとおりで,一年をこえ二年以内が最も多く(二八・二%),六月をこえ一年以内がこれに次いでいる(二〇・二%)。

III-103表 少年院仮退院者の仮退院期間(昭和44年)

 保護観察が良好な者に対しては,保護観察所長が,地方更生保護委員会に退院申請を行ない,その決定があった場合に,保護観察を終了する措置をとる。昭和四四年中には,一四五人の者について退院申請がなされ,一四四人が退院の決定を受けた。

(二) 不定期刑の仮出獄

 不定期刑受刑者の仮出獄について,最近五年間の許可決定人員をみると,III-104表に示すとおりであり,昭和四四年の不定期刑の仮出獄許可決定人員は八六三人で,成人を含めた仮出獄許可決定人員総数の四・四%にあたる。

III-104表 不定期刑仮出獄の許可人員(昭和40〜44年)

 昭和四四年の右許可人員八六三人中,一〇・八%にあたる九三人に対して,不定期刑の短期経過前に仮出獄が許されており,このように,短期経過前に仮出獄許可となる者の割合はIII-105表に示すとおり,最近,漸増の傾向にある。この仮出獄許可人員について,刑の執行率(長期に対する執行した期間の割合)を,最近四年間について示すと,III-106表のとおりである。これによると,執行率七〇%ないし七九%の人員が最も多く,昭和四四年についてみると,総数の二九・七%となっており,六〇%ないし六九%の二四・八%がこれに次ぎ,年を追うにしたがって,執行率の低い者の割合の増加する傾向が認められる。また,執行率九〇%以上の人員は,昭和四四年で一五・三%にとどまっており,定期刑仮出獄者のそれが五一・二%であるのに比べて,きわめて低く,釈放後の保護観察の期間を十分見込んで,仮出獄を許可される者が比較的多いということができる。

III-105表 不定期刑仮出獄者の短期経過前・後の許可人員(昭和40〜44年)

III-106表 不定期刑仮出獄者の刑の執行率別人員(昭和41〜44年)

(三) 保護観察官による仮釈放準備調査

 従来,地方更生保護委員会においては,矯正施設の長からの仮釈放申請を受理してはじめて,調査,審理等の活動を開始する場合が多かったが,仮釈放を適正かつ効果的に運用するためには,地方更生保護委員会が,これら一連の活動に,できる限り早期に着手し,迅速かつ的確に審理を行なうことが望ましい。こうした反省から,昭和四一年一〇月以降,一部の青少年施設(川越少年刑務所,浪速少年院ほか八少年院)において,地方更生保護委員会の保護観察官による仮釈放準備調査を実施している。これは,施設の長から仮釈放の申請を受理する前に,地方更生保護委員会の保護観察官が施設に出向き,(1)収容者との面接による,仮釈放の審理および環境の調査調整上参考となる資料の収集,(2)収容者の更生に必要な措置等についての,施設職員との協議,(3)保護観察所への調査結果の連絡等を行なうものである。
 昭和四四年において,仮釈放準備調査の対象となった人員は一,四二六人である。この準備調査の実施により,環境の調査調整が十分に行なわれ,主査委員の面接後,すみやかに,仮釈放の許否を決定することができることや,本人の保護観察に対する認識が高まり,帰住後の職業も,本人の希望や適性が,十分考慮されるに至ったことなどが指摘されており,今後一層の進展が期待されている。