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3 鑑別の概要 少年鑑別所の鑑別受付状況は,III-72表に示すとおりで,昭和四四年における受付総数は,七〇,七七五人であり,前年より一五,七三二人の減少となっている。総数の四七・四%にあたる三三,五二六人は,家庭裁判所の請求に基づいて実施する鑑別で,このうちの二五,七一二人が,身柄を少年鑑別所に収容して行なう収容鑑別であり,身柄を収容しない在宅鑑別は,七,七九二人である。これをここ数年の動向についてみると,収容鑑別の対象者数は,減少しているのに対し,在宅鑑別は,道交事犯少年の鑑別の激増等により,逐年増加している。
III-72表 少年鑑別所の受付状況(昭和42〜44年) 法務省関係機関の依頼による鑑別は,総数の三・七%(二,五八五人)で,その大部分が,刑務所,少年院などの矯正施設からの依頼によるものであり,また,一般の家庭,学校,その他の団体からの依頼による鑑別(一般鑑別)は,三四,六六四人で,家庭裁判所関係を上回り,総数の四九・〇%を占めている。なお,一般鑑別のなかには,最近における交通事故事件の激増に伴い,事業所などから自動車運転者としての適否の判定などを目的として,鑑別を依頼される事例がみられ,昭和四四年における一般鑑別中,これに該当するものは,一,〇九八人となっている。収容少年に対しては,できる限り,ありのままの姿をとらえて,資質の鑑別を行なうことが望ましいところから,まず,少年鑑別所の機能や鑑別の意味を十分に理解させ,身柄拘束に伴う不安感,焦燥感,自己防衛的態度を除去し,心情の安定が保たれるように,処遇上細心の配慮がなされている。 少年の資質鑑別にあたっては,身体医学的臨床検査や診断とならんで,精神医学的または臨床心理学的な諸種の検査法ないし診断法が行なわれている。現在,全国の少年鑑別所で一般に行なわれている検査法としては,知能検査として,新制田中B式,WAISおよびWISCが,性格検査として,法務省式人格目録,内田・クレペリン作業素質検査,法務省式文章完成法検査,ロールシャッハ検査,主題統覚検査,絵画―欲求不満スタディなどが多く用いられている。また,必要に応じて,職業適性検査,職業興味検査および脳波測定なども行なわれており,最近増加している道交事犯少年に対する鑑別に際しては,運転適性検査,運転態度検査などがあわせ実施されている。 家庭裁判所関係の鑑別終了人員について,知能指数の段階別分布をみると,III-73表に示すとおりである。昭和四四年においては,IQ九〇〜九九の者が二七・八%で,最も多く,次いで,IQ八〇〜八九の者の二七・七%であり,これら二段階で過半数を占めている。これは,一般少年に比較して,非行少年の知能がやや低いことを示しているが,最近三年間の推移をみると,IQ一〇〇以上の者が逐年増加しているのに対し,IQ八九以下は減少し,収容少年の知能指数が,高い方へ移行する傾向が認められる。 III-73表 知能指数段階別人員の比率(昭和42〜44年) 少年の精神状況の診断結果は,III-74表のとおりで,逐年増加の傾向にあった準正常が,昭和四四年においては,八五・一%で,前年より一・七%減少しており,正常は,五・四%と,前年より一・九%の増加となっている。精神病質は,わずかに減少しているが,精神薄弱,神経症,その他の精神障害は,ほとんど変動を示していない。III-74表 精神診断別人員の比率(昭和42〜44年) 少年の資質鑑別について,判定を下すにあたっては,収容少年の場合,身体状況,知能程度,人格特性,行動観察記録,本人の家庭環境や生育歴などの社会記録等の諸資料に加えて,本人との面接による問診所見をも総合したうえで,その少年にとって最も有効適切な処遇指針が決定される。少年を収容しないでなされる在宅鑑別では,収容鑑別の場合と違って,行動観察記録が欠けるほか,内容の上ではあまり差はないが,非行性の軽い少年を対象とする一般鑑別や,運転適性検査をおもな目的とする道交事犯少年など,非行性の程度や鑑別目的に応じて,簡略化した方式がとられる場合もある。 少年鑑別所における鑑別の結果は,非行に関連する問題点とその分析,処遇上の指針,社会的予後の問題,医療措置の必要の有無など,当面必要な処置にも触れ,本人にとって,最も適切な保護指針などの勧告事項を盛りこんだ鑑別結果通知書として,家庭裁判所に送付される。関係機関などからの依頼による場合には,これに準じた形で,依頼先に通知されている。 鑑別結果通知書では,[1]保護不要(保護措置を必要としないもの),[2]在宅保護(在宅のまま補導すればよいもの),[3]収容保護(少年院,教護院または養護施設に収容を適当とするもの),[4]保護不適(社会的危険性のある精神障害者で,精神衛生法による措置入院を適当とするもの,または保護処分にすることが不適当と認められるもの)などを区別して記載されるが,III-75表は,収容少年で鑑別を終了したものについて,これらの判定区分による人員の分布が示されている。これによると,在宅保護が最も多く,約六〇%を占めており,前年に比べ,その割合がやや増加している。収容保護は二六・二%で,前年に引き続き減少している。 III-75表 鑑別判定別人員(昭和42〜44年) 次に,家庭裁判所における審判決定の状況をみると,III-76表のとおりで,昭和四四年においては,在宅保護に相当する保護観察が三〇・二%で,例年どおり最も多い。他方,収容保護についてみると,少年院送致は,初等少年院一・二%,中等少年院一一・七%,特別少年院二・九%,医療少年院一・四%の合計一七・二%で,前年に比較し,その割合が減少している。検察官送致は,五・七%で,前年より〇・五%の減少となっている。これに対して,審判不開始,不処分および試験観察は,実人員で減少しているが,その割合では増加している。また,鑑別判定と審判決定との一致度は,昭和四四年で約七〇%となっている。III-76表 審判決定別人員(昭和42〜44年) |