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 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第一章/二/1 

二 少年犯罪の特質と背景

1 主要罪名別考察

 昭和四四年における少年の刑法犯検挙人員を,主要罪名別に示し,さらに,刑法犯検挙人員総数中に占める少年の割合を求めたのがIII-9表であるが,参考として昭和四三年の数字を対比することとした。

III-9表 主要罪名別少年および全刑法犯検挙人員(昭和43,44年)

 これをみると,昭和四四年の検挙人員で,最も多いのは業務上(重)過失致死傷の七九,八四六人で,少年刑法犯検挙人員総数の四二・五%を占め,窃盗の六九,一二九人,三六・八%がこれに次いでいる。
 すでに述べたように,最近の業務上(重)過失致死傷事件の激増にはめざましいものがあり,成人をも含めた刑法犯検挙人員を罪名別にみると,昭和三九年以降は業務上(重)過失致死傷の検挙人員が窃盗のそれをしのいで第一位となり,引き続き昭和四四年に至っている。少年刑法犯の検挙人員においても,昭和四三年までは窃盗が第一位であったが,昭和四四年にいたってはじめて業務上(重)過失致死傷に首位の座を譲っていることは注目すべきところである。
 窃盗に次いで実数の多いのは傷害,暴行,恐喝であるが,この三罪名に脅迫を加えた粗暴犯の検挙人員は,二五,一六五人で,総数の一三・四%を占めることになる。なお,罪名別検挙人員を前年に比較した場合,業務上過失致死傷が約八千人増加し,そのほか放火,横領が増加している以外は,いずれも減少している。ただ,放火にあっては,前年の一一九人から二五四人と二倍以上の増加が目につくが,これは,火炎びんを投げて放火に及ぶなど,過激な集団暴力事件に関与する少年が少なくなかったことなどの事情によるものと思われる。
 次に,検挙人員総数中に占める少年の割合をみると,最も割合の高い罪名は,窃盗の四三・一%で,恐喝の四二・一%,強盗の四〇・二%,強姦の三六・八%がこれに次いでいる。昭和四三年においては,恐喝が最も高く四五・七%で,窃盗,強姦,強盗の順になっているが,いずれも四〇%をこえている。強盗,恐喝,強姦という凶悪悪質な犯罪について,全事件の約四割が少年によって占められていることは,少年犯罪の重大性を示すものとして,あらためて認識されなければならない。
 次のIII-4図[1]および[2]は,昭和四四年と,その一〇年前の昭和三四年について,少年刑法犯検挙人員中に占める各主要罪名の構成比を図示したものであるが,最近一〇年間における業務上(重)過失致死傷の激増が目につく。

III-4図 主要罪名別少年刑法犯検挙人員の百分比

 次に,昭和三〇年以降一年おきに,少年刑法犯検挙人員の推移を,主要罪名別に,昭和三〇年を一〇〇とする指数で示したのがIII-10表である。これをみると,一般的に増加傾向を示している刑法犯総数と,昭和四四年だけ急増している放火を除けば,総じてここ数年来減少傾向にあることがわかる。しかしながら,このような全般的な減少傾向の中にあって,なお高い指数を保持しているのはわいせつや暴行などであり,ここにも最近の少年犯罪の特色の一つがうかがわれる。刑法犯総数が,各罪種別の全般的傾向とは逆に増加の一途をたどっているのは,述べるまでもなく,この表には取り上げなかった業務上(重)過失致死傷の激増に負うものであって,この種事犯の推移と特色については,交通犯罪の章に譲ることとしたい。

III-10表 主要罪名別少年刑法犯検挙人員の指数の推移(昭和30,32,34,36,38,40,42,44年)