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 昭和45年版 犯罪白書 第二編/第三章/三/2 

2 更生保護会

 更生保護会は,更生緊急保護法に基づき,法務大臣の認可を受けて更生保護事業を営む民間の団体である。更生保護事業は,その内容により,直接保護事業と連絡助成事業に分けられる。直接保護事業は,更生(緊急)保護の対象者に対し,更に罪を犯す危険を防止するため,帰住のあっ旋,金品給与,宿泊供与,就職の援助等の保護措置を行なうものであり,連絡助成事業は,直接保護事業の指導,連絡または助成を行なうものである。昭和四四年末において,直接保護事業だけを営む更生保護会は一三八団体,連絡助成事業だけを営む更生保護会は五五団体,両事業をあわせて営む更生保護会は二団体である。
 直接保護事業を営む更生保護会の被保護者には,保護観察所の委託によるものと,更生保護会が自ら任意に保護するものとがある。前者は,更生(緊急)保護の対象者のほか,保護観察中の救護,援護の対象者を含んでいる。
 昭和四四年末における全国の保護施設の状況は,II-111表のとおりである。これによると,保護施設数は一四一で,収容定員は三,七一六人であり,一施設平均の収容力は二六・四人である。種別ごとにみると,男子の成人および青少年を対象とするもの,および,男子成人を対象とするものが,それぞれ,五二施設で最も多く,女子だけを対象とするものは一〇施設である。

II-111表 更生保護会の種類別保護施設と収容定員(昭和44年12月31日現在)

 保護施設には,幹部職員として,主幹(実務の執行を総括する。)および補導主任(被保護者の教養,生活指導を行ない,その相談に応ずる。)が置かれているほか,補導員,事務員等が置かれている。幹部職員は,一定の資格要件を具備し,法務大臣の認可を得た者でなければならないとされている。
 国は,更生保護会に対し,被保護者の補導,宿泊,食事給与等の直接保護に要する費用と事務費にあてるための委託費を支給するほか,施設設備の基準維持のため,その補修に要する経費を補助している。しかし,更生保護会の経理状況は,昭和四三年度の法務省保護局の調査によると,II-7図にみられるとおり,支出超過を示しており,更生保護会の財政状態は,全般的に,窮迫していると考えられる。したがって,多くの更生保護会にあっては,職員の給与等も著しく低額にすえ置かなければならない等の事情から,職員の確保にも苦慮する状況にあり,このため,被保護者の処遇にも支障をきたすことが憂慮されている。

II-7図 更生保護会の経理運営収支状況(昭和43年度)

 更生保護会の被保護者の大部分は,社会生活への適応を困難ならしめている幾多の負因をもち,再犯の危険性も強い者であるが,これらの者の改善更生を助け,再犯の防止を図る等,更生保護会の果たしている役割は大きい。今後,更生保護会の処遇機能の充実強化のために,その経済的基盤の確立と経営の安定が要請されるところである。