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 昭和45年版 犯罪白書 第一編/第二章/四/2 

2 女子犯罪の特色

 昭和四四年に,検察庁で既済となった刑法犯と特別法犯(道交違反を除く。)の被疑者を,年齢別に,男女に分けてみると,I-55表のとおりである。これによると,男女の合計中に占める女子の割合は,総数において六・六%となっているが,女子は男子に比べ,三〇歳未満にあってはその割合が低く,三〇歳以上は,年齢の高くなるに従って女子の占める割合が高くなり,六〇歳以上では,一二・三%の高率となっている。

I-55表 被疑者の検察庁受理時の年齢層別・男女別人員(昭和44年)

 次に,同じく昭和四四年に,検察庁で起訴または起訴猶予となった刑法犯(準刑法犯を含む。)の被疑者を,初犯者と,罰金以上の前科のある者とに分けて,男女別にみると,I-56表のとおりであって,男子にあっては,初犯者が五九・一%を占めるにすぎないが,女子の場合には,その八九・〇%を初犯者が占めている。

I-56表 刑法犯被疑者の男女別・初犯者,前科者別の比較(昭和44年)

 次に,昭和四四年に検察庁で既済となった事件の被疑者を,おもな罪名について,男女別人員と男女の合計中に占める女子の比率についてみたのが,刑法犯(準刑法犯を含む。)についてはI-57表,特別法犯についてはI-58表である。なお,刑法犯の場合には,実数のきわめて少ない罪名が含まれることとなるため,女子の比率については,参考までに,昭和四〇年から四四年までの平均値をあわせて掲げることとした。まず刑法犯についてみると,嬰児殺,遺棄,過失致死傷といった,子供の出産や養育に関連すると考えられる罪名は,女子の占める比率がきわめて高い。これに対して,暴行,傷害,恐喝などの暴力的な犯罪は著しく少ないが,これはいずれも,女子の身体的,心理的特性を反映するものであろう。また,放火に占める女子の比率が比較的高いことは,暴力的犯罪の代償的な行為と理解することができ,女子の犯罪に殺人が比較的多いのも,薬物を使用したり,睡眠中の機会を利用するなど,体力の弱い女子にも遂行しうるためであり,とくに,人間関係のもつれなどから,激情にかられて行なわれる場合が多いためであろう。

I-57表 刑法犯被疑者の主要罪名別・男女別人員と女子の占める比率

I-58表 特別法犯被疑者の主要罪名別・男女別人員と女子の占める比率(昭和44年)

 特別法犯についてみると,売春防止法,風俗営業等取締法の各違反において,女子の占める比率が著しく高い。