前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和45年版 犯罪白書 第一編/第二章/一/6 

6 その他の刑法犯

 本項では,被害そのものや,取引社会に及ぼす影響が重大であることから,放火,略取・誘拐,文書偽造および有価証券偽造を,また,暴力団体の活動との関連においてその動向が注目される賭博を,それぞれ「その他の刑法犯」として取り上げることとする。以上のほか,贈収賄を省くことはできないが,これについては,本章七「公務員犯罪」において,取り上げることとした。
 放火等その他の刑法犯の,昭和三四年および昭和四〇年以降の発生件数および検挙人員の推移は,I-27表および28表のとおりである。

I-27表 放火等の発生件数(昭和34,40〜44年)

I-28表 放火等の検挙人員(昭和34,40〜44年)

 まず,放火についてみると,発生件数は,おおむね横ばいないしは漸減の傾向にあって,昭和四四年は,前年に比して一〇〇件以上の減少となっているが,昭和四三年まで発生件数の推移と同じ傾向にあった検挙人員は,昭和四四年に至って,一挙に前年の二倍以上という激増となっている。これは,一部の学生を中心とする過激な集団の,この種犯罪に及ぶ例が多かったことによるものであろう。
 次に,略取・誘拐であるが,昭和四四年は,発生件数,検挙人員ともに,前年より大幅な増加がみられ,一〇年前に比べると,それぞれ三倍に近い数字を示していることが注目される。この種の犯罪は,実数こそさほど多くはないが,一度発生すると,連鎖反応的に相次いで発生するおそれがあるので,検挙率の高いことが望まれるところである。ちなみに,昭和四三年の検挙率は,九六・二%であったが,四四年には,九七・四%と向上している。
 次に,文書偽造・有価証券偽造についてみると,発生件数は,昭和四三年以後,わずかに増加する傾向にあるが,検挙人員は,昭和四二年以降,減少の傾向を示している。
 最後に賭博についてみると,昭和二二年に八三,二〇七人という戦後最高の検挙人員数を記録して,刑法犯検挙人員総数の二割弱にまで及んだが,その後,逐年減少していたところ,昭和三五年から増加傾向を示し,最近は,やや減少の傾向にあるとはいえ,依然として相当数を示している。昭和四四年には,前年より,発生件数,検挙人員ともに,やや減少している。ところで,賭博には,暴力団が関係するような犯情の重いものから,娯楽の度が過ぎたというような軽微なものに至るまで,多種多様であるが,最近における賭博の検挙人員中,暴力団関係者の占める割合をみると,I-29表のとおりである。これによると,昭和四四年には,賭博の検挙人員総数の減少にもかかわらず,暴力団関係の検挙人員がわずかに増加し,その比率は,三五・七%という高い数字を示している。

I-29表 賭博罪検挙人員中暴力団関係者の占める割合(昭和40〜44年)

 次に,賭博を,単純な賭博と,常習賭博および賭博開帳等に分けて,その発生,検挙の状況をみると,I-30表および31表のとおりである。昭和四四年には,前年に比べて,発生件数,検挙人員ともに,暴力団関係者の犯すことの多い賭博開帳等が増加しており,一〇年前に比較すると,いずれの数字についても,実に一〇倍以上という激増を示していることが注目される。なお,常習賭博については,昭和四四年には,発生件数は,前年より減少しているが,検挙人員では増加している。

I-30表 賭博罪発生件数(昭和34,40〜44年)

I-31表 賭博罪検挙人員(昭和34,40〜44年)