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5 過失犯罪 I-26表は,昭和三四年ならびに昭和四〇年以降の過失犯の検挙人員の推移を示したものであるが,失火と過失致死傷は,多少の起伏はあるものの,おおむね減少の傾向をみせている。しかし,業務上(重)過失致死傷は,逐年激増の一途をたどり,昭和四四年には,昭和四〇年を一〇〇とすると,二三五という指数を示し,一〇年前の昭和三四年に比べると,六倍以上の増加となっている。さきにも触れたとおり,業務上(重)過失致死傷は,たとえば,昭和四四年についてみると,その九九・六%までが,道路交通事故に起因する人身事故事犯であって,まさに交通戦争の一語につきるものがある。しかしながら,残りの〇・四%の中には,医師,看護婦等の医療上の過誤による事件のほか,検挙される加害者の数こそ多くないが,地下鉄工事中のガス爆発事故や,食用油に有毒物質が混入したため,油症患者となった被害者が約九〇〇人に及ぶ事件など,一般の交通事故事件に比較して,はるかに広い範囲の者に,悲惨な被害を負わせる,大規模な産業災害事犯や,有害物質を含む薬品や食料品による致死事件を含んでいる。今後産業活動等が活発化し,あるいは,マスプロ・マスセール時代に入っていくとともに,この種事犯の動向には十分な注意が向けられなければならない。
I-26表 過失犯罪検挙人員(昭和34,40〜44年) |