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 昭和44年版 犯罪白書 第二編/第四章/二/2 

2 収容状況

(一) 概況

 少年鑑別所に収容される少年の主なものは,家庭裁判所が受理した少年事件のうち,裁判官が,審判を行なうために身柄を確保して鑑別の必要があると認めた少年,および検察官が,勾留の請求に代え観護措置を請求した少年で,裁判官の観護措置の決定によって,少年鑑別所に送致されたものである。勾留に代わるものを除き,本来の観護措置による収容期間は,原則として二週間であるが,とくに継続の必要があるときは,一回に限り更新されるので,最も長い場合に四週間となる。従来,全国平均収容期間は,二〇日強となっている。
 最近五年間の入所状況と一日平均収容人員の推移をみると,II-178表に示すとおりである。昭和四三年の入所人員は,三〇,六〇三人で,前年に比べて,三,一九四人減少している。入所者のうち,逃走者の連れ戻し,施設間の移送を除いた新収容者は,二七,四七四人である。入所人員は,昭和四一年にわずかに増加したが,その後は減少傾向にあり,昭和三九年を一〇〇とする指数でみると,昭和四三年は,七九となっている。昭和四三年の一日平均収容人員は,一,五二六人で,前年より二一三人減少している。

II-178表 少年鑑別所入所状況と一日平均収容人員(昭和39〜43年)

 昭和四三年において,観護措置により,少年鑑別所に収容された少年の数は,家庭裁判所の取り扱う道路交通法違反を除いた一般保護事件の一七・三%であり,最近五年間の平均をみると,一七・七%である。道路交通関係を除けば,非行少年の二割弱が,心身の鑑別のため,家庭裁判所から少年鑑別所に送られているわけである。
 新収容者の大部分は,本来の観護措置によるもので,勾留にかわる観護の措置は,昭和四三年で,新収容者総数の六・五%にすぎない。検察統計によると,昭和四三年に家庭裁判所に送致された少年のうち,勾留中に送致された者が一〇,四八一人で,少年鑑別所収容中に送致された者は,一,五二一人にとどまっている。

(二) 性別・年齢

 新収容者を男女別および年齢別にみると,II-179表のとおりである。昭和四三年では,男子は二四,七三〇人,女子は二,七四四人(全員に対して,九・九%)である。男子では,一九歳が最も多く,女子では,一七歳が最も多い。各年齢ごとの構成比率をみると,一七歳以下の低年齢層では,女子のほうが高率であり,一八,九歳の高年齢層では,男子のほうが高率である。

II-179表 少年鑑別所新収容者性別・年齢別人員の比率(昭和39〜43年)

(三) 行為別

 II-180表によって,昭和四三年における収容少年の行為別人員をみると,最も多いのは,窃盗の四三・九%であり,次いで,虞犯の一一・二%,強姦,わいせつの八・七%,傷害・同致死の八・〇%,恐喝の七・一%が多い。性別でみると,男子の窃盗に対して,女子では,虞犯が多いのが特徴的である

II-180表 行為別人員の比率(昭和43年)

(四) 人格特性

 収容少年の人格特性について,II-181表は,家庭裁判所関係の鑑別終了者の知能指数段階別人員の比率を示したものである。これによると,例年のことながら,昭和四三年でも,IQ八〇〜八九(準普通知能)の者が二九・五%で,最も多く,九〇〜九九(普通下位知能)の者が二七・八%であり,これら二つの段階で,過半数を占めている。これら少年の知能指数の分布を一般少年のそれと比較すると,一般少年の知能指数の分布が,一〇〇を頂点とした正規分布曲線(左右対称の釣鐘状の曲線)を示すのであるから,収容少年の知能は,一般少年と比べて,やや低い者が多いといえる。しかし,表をみると,IQ一〇〇以上が逐年増加しているのに対し,IQ七九以下(限界知および精神薄弱)は減少しており,年々,知能の高い方に移行している点が特徴的である。

II-181表 知能指数段階別人員の比率(昭和39〜43年)

 右の特徴は,精神状況についてもみられる。すなわち,II-182表にみるとおり,昭和四三年においては,準正常が八六・八%を占め,その割合は,逐年わずかずつ増加している。これに反し,精神薄弱および精神病質は,減少の傾向を示している。神経症,その他の精神障害の比率は,極めて少なく,大きな変動は認められない。

II-182表 精神状況別人員の比率(昭和39〜43年)