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 昭和44年版 犯罪白書 第二編/第四章/一/2 

2 少年検察

 少年検察のおもな対象は,犯罪少年であるが,前記のように,罰金以下の刑にあたる罪を犯した少年は,警察から家庭裁判所に直接送致されることになっているから,少年検察の対象となるのは,原則的には,法定刑として禁錮以上の刑が定められている罪を犯した少年である。
 ところで,全国の検察庁が,昭和四三年中に新たに受理した少年事件の被疑者総数(検察庁間の移送,家庭裁判所からの送致および再起を除いた受理人員数,以下本節において,「新規受理人員」という。)は,六五五,三四〇人(前年より一〇四,八七六人減)である。その内訳は,刑法犯(準刑法犯を含む。以下本項において同じ。)が,総数の三〇・一%にあたる一九七,四三二人(七七人増),道路交通法違反(以下,「道交違反」という。)を除く特別法犯が,総数の一・八%にあたる一一,六八一人(四九三人減),道交違反が,総数の六八・一%にあたる四四六,二二七人(一〇四,四六〇人減)となっている(検察統計年報資料による)。
 まず,道交違反を除く新規受理人員について,主要罪名別の人員数とその百分比を,前年と対比して示すと,II-167表のとおりである。これによると,刑法犯については,昭和四三年も,前年と同じく,窃盗が最も多いが,これに次ぐ過失傷害との差はきわめて少ない。過失傷害の次が傷害,恐喝,暴力行為等処罰に関する法律違反の順となっているが,前年より大幅に増加しているのが過失傷害,わずかに増加をみせているのが放火で,他の主要罪名については,すべて前年より減少している。

II-167表 少年被疑者新規受理人員(昭和42,43年)

 次に,道交違反を除く特別法犯の新規受理人員の中では,銃砲刀剣類所持等取締法違反が,総数の二九・八%を占めて最も多い。
 II-168表は,昭和四三年の少年事件新規受理人員総数について,年齢層別に,その比率をみたものである。一八,九歳の年長少年が最も多く,総数の五七・二%を占め,前年のそれが五六・七%であったのに比べて,さらにその割合を増している。

II-168表 少年被疑者の年齢層別新規受理人員(昭和43年)

 検察官は,少年の被疑事件について,捜査を行ない,犯罪の嫌疑があり,または,嫌疑がなくても家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料する場合には,原則として,その事件を家庭裁判所に送致しなければならないものとされている。昭和四三年中における検察庁の少年被疑事件処理状況をみると,既済総数は七三八,五七一人,検察庁間の移送を除くと六五三,〇八九人であり,そのうち家庭裁判所送致は,九九・六%にあたる六五〇,五一六人である。そのほかは,年齢超過後の処分一,七八九人,不起訴・中止が七八四人となっている(検察統計年報資料による)。
 検察官が,少年を家庭裁判所に送致するにあたっては,少年の処遇に関して意見を付けることができる。II-169表は,昭和四三年中に検察官が家庭裁判所に送致した少年を,その意見別に,刑法犯,特別法犯,道交違反に分けて,その比率をみたものである。これによると,刑事処分を相当とする旨の意見を付しものの割合が最も多いのは道交違反で,刑法犯がこれに次ぎ,一方,少年院送致の処分および保護観察処分を相当とする旨の意見を付したものの割合は,いずれも刑法犯が最も多く,特別法犯がこれに次いでおり,この傾向は,例年変わっていない。

II-169表 罪種別検察官処遇意見の比率(昭和43年)

 ところで,検察官の取り扱う少年事件には,右のほかに,家庭裁判所から刑事処分が相当であるとして,または,年齢超過のため,いわゆる逆送されたものもある。この逆送を受けなければ,検察官は,少年事件の公訴を提起できないし,また,逆送を受けた事件は,年齢超過による場合を除き,原則として公訴を提起しなければならないのである(少年法第四五条第五号)。そこで,少年法第二〇条等の規定によって家庭裁判所から送致された事件について,昭和四三年中の検察庁の処理状況をみると,II-170表のとおりである。処理総数二一九,七一五人のうち,道交違反が一七一,二二六人で,総数の七七・九%を占め,刑法犯が,二一・九%でこれに次いでいる。また,起訴された者の内訳をみると,起訴総数九八,六五三人のうち,七八・二%の七七,一〇五人(前年より四二,一八〇人減)が道交違反によって占められ,これに次ぐ刑法犯は,総数の二一・七%,二一,四一四人(前年より一,九四四人増)となっているが,その八九・四%にあたる一九,一四五人までが過失傷害である。また,起訴総数の九七・一%までが,略式命令または即決裁判請求で,公判請求は二・九%にすぎない。公判請求率の最も高いのは,特別法犯の三〇・六%で,刑法犯は一二・八%,道交違反にあっては,わずか〇・一%にとどまっているが,公判請求人員では,総数二,八八四人中,刑法犯がその九五・一%の二,七四四人を占めている。これを主要罪名別にみると,過失傷害の八五二人が最も多く,窃盗七九〇人,強制わいせつ,強姦・同致死傷三六二人,傷害二四四人,恐喝一二五人,殺人一〇四人の順となっている。

II-170表 検察庁における少年被疑事件の処理状況(既済)(昭和43年)