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3 少年審判 非行のある少年について審判を行なうこと,すなわち非行少年を,刑事処分にするか,あるいは保護処分にするか,また,保護処分にするとしても,どのような保護処分にするか,さらに,右のいずれの処分にもしないこととするかなどを決定すること,および審判のための調査を行なうことは,家庭裁判所の権限に属する。
まず,最近五年間の全国家庭裁判所の少年保護事件受理人員総数の推移を,行為別にみると,II-171表のとおりである。これによると,受理総数は,昭和四一年までは漸増の傾向にあったが,昭和四二年以降減少の傾向を示し,同四三年の受理総数は,前年より約一八万人減少して,八九六,六五三人となり,その七二・九%が道路交通保護事件(道交違反事件および自動車の保管場所の確保等に関する法律違反事件をいう。)で,一般保護事件(少年保護事件のうち,道路交通保護事件を除いたもの)のうち,刑法犯が受理総数の二三・六%,特別法犯が二・三%,虞犯が一・一%となっている。 II-171表 家庭裁判所における少年保護新受事件の受理人員(昭和39〜43年) 家庭裁判所は,受理した少年について,審判のため調査を行なうが,右の調査にあたるものとして,家庭裁判所に家庭裁判所調査官がおかれ,法務省所管のものとして少年鑑別所がある。このようにして,少年事件について調査を行なった結果,所在不明その他の理由によって審判に付することができないとか,非行がきわめて軽微であることなどによって審判に付するのが相当でないと認められる場合には,家庭裁判所は,審判を開始しない旨の決定をする(少年法第一九条第一項)。調査の結果,審判を開始するのが相当と認められる場合には,家庭裁判所は,その旨の決定をして(同法第二一条),直接審理する。その結果,児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは,都道府県知事または児童相談所長に,一六歳以上の少年について,刑事処分を相当と認めるときは,検察官に,それぞれ送致する旨の決定をする(同法第二三条第一項)。また,保護処分に付するのを相当と認めるときは,(1)保護観察所の保護観察に付すること,(2)教護院または養護施設に送致すること,(3)少年院に送致すること,のいずれかの保護処分を決定し(同法第二四条),保護処分に付することができないとか,その必要がないと認められる場合には,不処分の決定を行なう(同法第二三条第二項)。なお,調査または審判の結果,すでに二〇歳以上であることが判明した場合には,決定で,検察官に事件を送致しなければならない(同法第一九条第二項,第二三条第三項)。これら家庭裁判所の決定の状況を,最近五年間の統計によってみると,II-172表のとおりであり,さらに,これを最近二年間について,一般保護事件と道路交通保護事件とに分けてみたのが,II-173表である。決定のうち,例年,最も多いのが審判不開始で,これに次ぐのが不処分となっている。昭和四三年の数字では,前者が五二・〇%で,その割合は逐年低下の傾向を示し,後者は,二九・九%で,審判不開始とは逆に,逐年その割合が増加している。保護処分の中で最も多いのは,保護観察で,終局決定総数の三%前後を占め,その割合を増す傾向をみせている。これに反し,少年院送致は,総数の一%弱であるが,総数に対する割合および実数が,ともに,昭和四二年以降減少の傾向にある。一方,検察官送致は,不開始,不処分に次いで多く,一二・九%ないし一七・一%を占めているが,昭和四二年の一七・一%から,同四三年の一三・八%に急減しているのが目だっている。これを,一般保護事件と道路交通保護事件とに分けてみると,業務上過失致死傷事件の占める割合が増した前者については,検察官送致率に増加がみられるが,事件の大半を占める後者の検察官送致率は,昭和四二年の一八・三%から,同四三年には,一三・七%に激減しており,総数における検察官送致率低下の原因が,ここにあることを知ることができる。道路交通保護事件により保護観察処分となる者の割合は,検察官送致とは逆に,昭和四二年の一・〇%から,同四三年の一・四%とかなりの割合で,上昇していることも注目されるところである。これは,成人に対して,いわゆる「交通反則通告制度」が施行されたことの影響が現われたものであろう。一般保護事件と道路交通保護事件とを比較すると,前者において,保護処分となるものの割合が高く,後者において,不開始,不処分の割合が高い。 II-172表 家庭裁判所終局決定人員(昭和39〜43年) II-173表 一般保護・道路交通保護事件別の家庭裁判所終局決定人員(昭和42,43年) 次に,昭和四二年に終局決定のあった一般保護事件(虞犯を除く)のうち刑法犯と特別法犯,さらに,そのうちの主要罪名について,決定の内訳を対照して示したのが,II-174表である。これによると,刑法犯総数(一八一,五三八人)のうち,最も多いのは,不開始と不処分で,合計して七一・三%を占めているが,この平均を上廻って不開始,不処分となる割合の高いのは,暴行八九・二%,窃盗八二・一%,傷害七八・〇%であり,最も低いのは,殺人の一一・一%である。検察官送致の割合は,総数において一四・六%であるが,この割合の高いものは,殺人の五〇・七%,業務上過失致死傷の三八・九%で,強盗の一六・五%,強姦の一一・八%がこれに次ぎ,実数では総数二六,五七六人のうち,八六・〇%(前年は,八一・三%)にあたる二二,八五六人が,業務上過失致死傷によって占められている。保護観察処分となった者の総数一九,一五九人のうち,四五・六%の八,七二八人が窃盗であるが,比率では,強姦の三九・七%が最も高い。少年院送致決定をみる者の割合が最も高いのは,強盗の二九・〇%で,放火の二六・七%,強姦の二〇・〇%,殺人の一五・二%がこれに次ぎ,実数では,少年院送致総数五,九一四人のうち窃盗が五五・二%にあたる三,二六七人を占めている。特別法犯では,売春防止法違反が,検察官送致となったり,保護処分の決定をみる者が,比較的多いのに対して,銃砲刀剣類所持等取締法違反にあっては,不開始,不処分となる者の割合がきわめて高いのが特色となっており,特別法犯の総数では,不開始,不処分の率が,九一・七%にも及んでいる。II-174表 一般保護事件終局決定人員(虞犯を除く)(昭和42年) このように,家庭裁判所の処分状況は,一般的にみて,不開始,不処分の割合が,きわめて多いのに対し,保護処分および検察官送致の割合が,ともに,きわめて少ないことが目だっている。そこで,昭和四三年中に,家庭裁判所で終局決定がなされた少年事件につき,これを,刑法犯,道交違反を除く特別法犯,道交違反に分けて,検察官の処遇意見と,家庭裁判所の終局決定とを対比させ,その合致率をみたのが,II-175表であり,総数について,昭和三四年以降,同四三年までの合致率の推移を比較したのが,II-176表である。これによると,昭和四三年においては,総数について,検察官が付した処遇意見と,家庭裁判所の終局決定との合致率は,刑事処分相当の意見を付した事件において,その三八・一%,少年院送致相当の意見を付した事件において,その二八・〇%にすぎず,いずれも,昭和四二年以降,合致率の低下がみられる。また,検察官の処遇意見のいかんにかかわらず,少年院送致の比率が低下する傾向を示していることが,注目をひくところであろう。II-175表 検査官の処遇意見と家庭裁判所の終局決定との合致率(昭和43年) II-176表 検査官の処遇意見と家庭裁判所の終局決定との合致率(昭和34〜43年) |