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 昭和44年版 犯罪白書 第二編/第三章/三/3 

3 更生保護事業を営む団体

 更生緊急保護法により,法務大臣の認可を受けて,更生保護事業を営む団体は,更生保護会である。
 更生保護事業は,その内容により,直接保護事業と連絡助成事業の二種類に分けられる。直接保護事業とは,前記更生(緊急)保護の対象者に対し,更に罪を犯す危険を防止するため,帰住のあっ旋,金品給与,宿泊所供与,就職援助等の措置を加え,その更生を保護する事業をいい,連絡助成事業とは,直接保護事業の指導,連絡または助成をする事業をいう。
 直接保護事業を営む更生保護会の被保護者には,保護観察所から委託を受けた者と,みずから任意に行なう者との別があり,前者には,更生(緊急)保護の対象者のほかに,保護観察中の救護,援護の対象者も含まれることとされている。
 昭和四三年一〇月現在において,直接保護事業だけを営む,実働中の更生保護会は,一二六団体(一二六施設),連絡助成事業だけを営む更生保護会は,五六団体,両事業をあわせて営む更生保護会は,一団体(一施設)である。
 保護施設の収容定員は,三,三七四人で,一施設平均二六・六人(定員の最小は七人,最大は一〇〇人)となり,また,施設には,男女一方だけを収容するものと,双方を収容するもの,青少年または成人の一方だけを収容するものと双方ともに収容するものとの区別があるが,その種別ごとの保護施設および収容定員数は,II-161表のとおりで,男子青少年および男子成人を対象とするもの,ならびに男子成人だけを対象とするものが最も多く,それぞれ四六施設で,女子だけを対象とするものは,九施設である。

II-161表 更正保護会の種類別保護施設と収容定員(昭和43年10月31日現在)

 各保護施設には,幹部職員として,実務の執行を総括する主幹と,被保護者の教養,生活指導を行ない,その相談に応ずる補導の責任者である補導主任が置かれており,ともに一定の資格要件を具備した者で,法務大臣の認可を得たものでなければならない。更生保護会には,ほかに補導員,事務員が置かれている。
 国は,更生保護会に対し,補導,宿泊,食事付宿泊に伴う直接の費用と,それに伴う事務費にあてる委託費のほか,施設設備の基準維持のため,その補修等の費用に要する補助金を交付している。しかし多くの更生保護会にあっては,その経営が必ずしも容易ではなく,職員の確保等にも苦慮しているのであって,これが被保護者の処遇面に支障を生ずるおそれがある。
 更生保護会の被保護者は,さきにも述べたように,適当な帰住先もないばかりか,保護観察を全く受けない満期釈放者や,保護観察期間の短い仮釈放者の場合が多く,正常な社会生活に復帰することが困難で,再犯の危険性も強いため,更生保護会の労苦は大きく,また,地方公共団体で,このような更生保護事業を行なっているところがなく,保護観察所にも,継続して収容保護を行なう施設がない現状において,犯罪前歴者の再犯防止等のため,更生保護会の果している役割は,きわめて大きい。
 さらに,更生保護会においては集団処遇を実施するのに適当であるところから,グループカウンセリングなど集団処遇の場として活用する方法をはじめとして,更生保護会の処遇機能の充実,拡大が要請されているが,このためには,更生保護会の経済的基礎が一段と強化され,その経営が安定し,その施設が整備されることが必要であろう。