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1 公務員犯罪の受理と処理 公務員による犯罪には,公務員の職務に関して行なわれるもの(たとえば収賄)と,その職務に関係なく行なわれるものとがあるが,ここでは,その両者を含めた,公務員により行なわれる,すべての犯罪について述べることとする。
I-135表は,昭和三九年以降,検察庁で新たに受理された公務員犯罪(道交違反を除く。)を主要罪名別に集計したものであるが,公社や公団の職員のような,いわゆる「みなす公務員」による犯罪は含んでいない。まず,各罪名についてみると,職権濫用が,昭和四〇年から四一年にかけて,倍増しているのが注目される。これは,同年に,自己の処遇に関係のある公務員を,相次いで告訴した特殊な受刑者が少なくなかったことなどの理由に基づくものと考えられ,後に述べるとおり,同罪については,本来犯罪の嫌疑の乏しい告訴事件が多いことに留意する必要がある。次に,収賄罪は,昭和三九年から四一年にかけて増加し,四二年には減少したものの,四三年には,再び,増加している。窃盗,詐欺,横領,偽造の各罪については,昭和四二年に,偽造が,わずかな増加をみせているほかは,全体として減少ないし横ばいの状況をみせている。「その他の刑法犯」とは,人の身体に対する犯罪と,人身事故事犯を主とするものであるが,最近急激に増加している。これは,自動車の普及に伴って,業務上(重)過失致死傷罪が増加したことによるものと思われる。結局,以上の各罪種を合計した公務員犯罪全体は,昭和四〇年以降,漸増の傾向にあるが,その原因としては,交通事故事件の増加が,財産犯の減少を上回ることによるものである。 I-135表 公務員犯罪主要罪名別検察庁新規受理人員(昭和39〜43年) 次に,検察庁における公務員犯罪の処理状況を,最近五年間にわたってみると,I-136表のとおりである。I-136表 公務員犯罪主要罪名別起訴・不起訴人員と起訴率(昭和39〜43年) 各罪名別に,その処理状況をみると,まず,職権濫用の起訴率がきわめて低く,不起訴処分の多いことが目につく。この種の事件の大部分は,さきに述べたように,警察,検察庁,裁判所,矯正施設などの職員に対する告訴,告発事件であって,もともと,犯罪とならないもの,告訴,告発時にすでに時効が完成しているものや犯罪の嫌疑がないか,あるいは不十分なものが多いためである。逆に,最も起訴率が高いのは,「その他」の犯罪であるが,そのおもなものは,業務上(重)過失致死傷であり,起訴の多くは,略式命令を請求したものである。したがって,実質的に,最もきびしい処理がなされているのは,起訴率が五割をこえる収賄といえよう。窃盗,詐欺,横領,偽造の起訴率は,あまり高くないが,この種の公務員犯罪は,犯人がおおむね初犯者で,被害も回復されている事例が多いことによるものと考えられる。 |