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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第三章/一 

第三章 少年犯罪の予防活動

一 地域社会の組織事業(コミュニティ・オーガニゼーション)

 非行や犯罪の対策も,一般の社会福祉事業とおなじく,ケースワークやグループ・ワークばかりでなく,コミュニティ・オーガニゼーションが必要である。とくに,それらの予防には,地域社会の全体が一体となって,関心をもち行動するのでなければ,実効はあがらない。この意味で,地域社会の組織化が必要になる。うまく組織化が成功して,地域社会が浄化すれば,犯罪や非行は少なくなる。地域社会は,そのままでおけば,なんらかの意味で社会不適応の部分をもつものである。その不適応の部分が,ひいては,犯罪や非行をひきおこすことになる。そこで,その地域社会の公私の集団の代表者が集まって,そこにある福祉資源や社会資源を活用し動員するために討議し,その結果を活動にうつすことによって,その地域社会の社会不適応の部面をのぞけば,その進歩向上をはかることができるとともに,犯罪や非行を少なくすることができる。今日では,各地域社会でいろいろな試みがあるが,犯罪の予防と青少年の健全な育成をたてまえとして,活動の中核となっているのは,各地の青少年問題協議会である。
 青少年問題協議会は,昭和二四年の衆議院の「青少年犯罪防止に関する決議」と,参議院の「青少年の不良化防止に関する決議」とに応じ,総理府に青少年問題対策協議会が設置されたのに発して,その後,青少年問題協議会と改称され,全国都道府県,市町村にも,あいついで地方協議会が組織された。昭和二八年には,青少年問題協議会設置法が制定された。この協議会は,青少年の指導,育成,保護および矯正に関する総合的施策の樹立について必要な事項を調査し,その総合的施策の実施のために,関係機関相互間の連絡調整にあたるのを仕事としている。中央協議会は,その連絡調整の結果を,そのつど,政府に意見具申し,また,対策要綱を決定して,その実現に努力してきた。そのおもなものは,「いわゆる人身売買事件対策要綱」(昭和二七年),「精神薄弱児対策基本要綱」(昭和二八年),「青少年覚せい剤問題対策要綱」(昭和二九年),「青少年に有害な出版物,映画等対策について」(昭和三〇年),「青少年に有害な映画対策について」(昭和三一年),「勤労青年教育対策要綱」(昭和三二年),「喫茶店等の深夜営業対策に関する意見について」(昭和三三年),「青少年の団体活動の促進並びに青少年の非行防止に関する総合的研究機関の設置等について」(昭和三三年),「精神薄弱児対策の推進について」(昭和三四年)である。
 中央協議会は,また,その首唱にもとづき,毎年,月間をさだめて,青少年保護育成運動を行なっている。目標をさだめて,地域社会に呼びかけ,その促進をねらいとするものである。
 地方協議会では,それぞれの地域社会の特徴にしたがって,特色ある非行防止の活動をしている。その詳細は,青少年問題協議会の刊行にかかる「青少年白書」の記述にゆずる。